弁護士堀康司(常任理事)(2003年2月センターニュース179号情報センター日誌より)
4つの基本方針
昨年12月に開かれた医道審議会医師分科会は行政処分に関する方針を公表しました。基本方針は次の4点です。
1)業務上当然に果たすべき義務を果たしていない行為には厳正に対処する。
(応召義務や診療録に真実を記載する義務等職業倫理上当然に遵守すべき義務を含むとの注記が
あります)
2)医療提供機会や医師の身分を利用した行為についても処分対象とする。
3)業務外の場面でも他人の生命・身体を軽んずる行為には厳正に対処する。
4)業務を行うにあたって自己の利潤を不正に追及する行為には厳正に対処する。業務と直接関係
のない場合でも、経済的利益を求める不正行為は処分対象とする。
医療過誤に関する方針は?
基本方針の他に、医師法違反等12の事例毎に対処方針がそれぞれ解説されています。
その中の1類型として医療過誤も挙げられており、過失の度合いと結果の大小を中心として処分の程度を決定し、刑事処分の量刑等を参考としつつ、明らかな過失やリピーターの場合には重めの処分とするとされています。
また病院の管理体制や他の医療従事者の注意義務の程度、生涯学習努力の有無等も参考とすると書かれていますが、謝罪や賠償の有無といった点は明記されていません。行政処分の強化が民事訴訟での対立激化を誘発することがないよう、これらの点も処分程度の決定にあたって考慮する方針を早急に明確化すべきです。
刑事事件以外の医療過誤も処分対象へ
医療過誤については、刑事事件とならなかったケースであっても明白な注意義務違反の認められれば処分対象とする方針が総論部分に明記されました。具体的な運用方法等は今後早急に検討されるとのことです。
なお一部では、被害者からの処分申立を積極的に受理する方針と報じられましたが、今回公表された資料中には特別の言及はなされていませんでした。この点は被害者側にとって重大な関心事であり、今後の医道審の姿勢が注目されます。