弁護士堀康司(常任理事)(2003年9月センターニュース186号情報センター日誌より)
厚労省研究班が初会合
先月21日、医療事故の全国的頻度に関する研究班(主任研究者・堺秀人東海大学病院副院長)が運営委員会を開催し、我が国初の医療事故頻度全国調査がいよいよスタートを切りました。
この研究班は、医療に係る事故事例情報の取扱いに関する検討部会が本年4月15日に発表した報告書において、全国的な医療事故発生頻度の把握の重要性が指摘されたことを受けて設置されたものです。
1万5000人のカルテの抜き取り調査へ
報道によれば、同研究班は医療事故被害者や弁護士を含む20数名で構成される運営委員会で調査の進め方を検討し、2003年度に10~20の病院で試験的にカルテの抜き取り調査を実施した上で、翌年から本調査に入り、最終的には100の病院から合計1万5000人分のカルテについて分析を行うことを目標とするそうです。
80年代にニューヨーク州で行われた調査(いわゆるハーバードスタディ)では、51の病院から合計約3万人のカルテについて調査が行われ、その結果として入院患者の3.7%が医療事故を経験しており、うち27.6%が過失によるものであったことが判明しました。その後実施されたユタにおける調査では13病院の約4900人のカルテが、同じくコロラドにおける調査では15病院の約9700人のカルテが対象とされています。
今回の日本の調査は、これらの著名な調査に肩を並べる規模のものとなりそうです。
安全対策のための基礎情報の集積に期待
過去、日本では医療事故の大規模な実態調査が実施されていなかったため、どのような事故がどのような局面でどのくらい発生しているのかについては海外のデータに基づいて推計するしかありませんでした。そのため、実態把握なきまま対策を検討しているという状況が続いてきたことは否めませんでした。
今回の調査によって、日本の医療安全の礎となるような有益な基礎情報がもたらされることを期待したいと思います。