弁護士堀康司(常任理事)(2003年12月センターニュース189号情報センター日誌より)
平成15年改正法が成立
司法制度改革審議会意見書を踏まえて民事訴訟法の改正作業が進められていましたが、平成15年7月、実際に改正法が成立しました。施行時期は本稿執筆時点では未定となっていますが、平成16年4月が有力視されています。
計画審理の推進
裁判迅速化法の施行ともあいまって、審理計画どおりの訴訟進行を求められる傾向はより強まると思われます。協議による審理計画の変更も可能と定められていますので、柔軟な運用を求めて審理充実を図る必要がありそうです。
提訴前証拠収集手続の拡充
新たに提訴予告通知制度が創設され、提訴前の当事者照会や文書送付嘱託、調査嘱託、専門家による意見陳述の嘱託等が可能となりました。
医療過誤分野では、証拠保全資料に基づいた提訴前説明会等が実施されるケースも増えていますが、提訴前交渉に応じない医療機関も少なからず存在しますので、そこを動かすカギとなるかもしれません。ただ、照会等に応じなかった場合のペナルティが必ずしも明確ではないため、照会拒否そのものが心証形成に負の影響を与えるという運用を実現することが不可欠と思われます。
専門委員制度
専門委員制度については、さまざまな議論がありましたが、結局は導入されることとなりました。しかしながら、適切な鑑定人の選定になお苦労している現状で、適切な能力を持つ専門委員を確保することが可能とは思われず、実効性には疑問を感じざるを得ません。医療機関側代理人からも、中途半端な「専門家」の関与による審理の混乱を懸念する声が聞こえてきます。
過渡期の重要性
紙幅の都合で全体像を論じることができませんが、来春に予想される改正法の施行に向けて裁判所も各地でさまざまな準備を進めることと思われます。私たちも地域間で十分な情報交換を行い、審理充実に資する制度運用を求める必要がありそうです。