弁護士園田理(常任理事)(2004年8月センターニュース197号情報センター日誌より)
平成16年度社会保険診療報酬等の改定
平成16年4月より、社会保険診療報酬等が改定されました。改定された点の中で特に注目すべきは、患者の視点の重視、国民に対する情報提供の推進という観点が盛り込まれ、年間手術症例数などの情報が公開されるようになった点です。
手術症例数などの届出
これまで特定の手術については、それが行われる保険医療機関が厚生労働大臣の定める施設基準に適合するか否かで、点数が算定されたり、所定点数より30%減算されたりすることになっていましたが、施設基準の見直しがなされ、当該手術を年間何例実施しているか、当該手術に関し10年以上の経験を有する医師が何名常勤しているか、という手術症例数、医師経験年数といった点で一定の基準を満たす施設については、所定点数に5%が加算され、他方、手術症例数や医師経験年数の基準をともに満たさない施設については所定点数が30%減算されるようになりました。保険医療機関は、そのような施設基準が設定された手術について地方社会保険事務局に年間手術症例数を届け出ることとされていますので、地方社会保険事務局に情報公開請求することによって、特定の保険医療機関分だけでなく、当該地方社会保険事務局の管轄区域内の各保険医療機関から届出がなされた年間手術症例数の一覧情報も入手できるようになっています。
手術症例数の院内掲示と患者への説明の充実
また、点数が減算されない施設の要件として、手術症例数を病院内に掲示することや、患者に対して、当該手術の内容、合併症、予後等を文書を用いて詳しく説明を行い、併せて、患者から要望のあった場合、その都度手術に関して十分な情報を提供することが挙げられるようにもなりました。このように患者に対する直接的な情報提供の推進も図られるようになっています。
所 感
従来、医療の安全や質に関する情報の公開がほとんどなされて来なかった中で、年間手術症例数などの情報が公開されるようになったことは、基本的に歓迎すべきことで、評価できると思います。ただ、手術症例数が多ければ当該手術に関する医療技術や医療の質が高いということに直ちに結びつくわけでもありません。患者は、公開され入手した情報を冷静に見極める必要があると思います。