始動した義務的報告制度

弁護士堀康司(常任理事)(2005年3月センターニュース204号情報センター日誌より)

評価機構が医療事故収集等事業を開始

  日本医療機能評価機構は機構内に「医療安全防止センター」を設置し、平成16年10月1日より「医療事故情報収集等事業」を開始しました。

  これは、特定機能病院と事故等報告病院(国立高度医療センター、国立ハンセン病療養所、国立病院機構の開設する病院、大学附属病院本院)は、医療事故が発生した場合、発生日から2週間以内に事故等報告書を作成して、厚労大臣の登録を受けた分析機関に対して提出しなければならない(医療法16条の3第7号、同法施行規則9条の23第1項第2号、同11条の2、同12条)とされたことに基づき、登録分析機関となった評価機構が事故等分析事業(同法施行規則12条の6第1項)として実施されることとなったものです。

報告と分析の流れ

 今年1月24日にWeb上で公開された同事業要領によれば、同事業には事故報告が法的に義務づけられた前記医療機関(合計255医療機関)以外でも、希望する医療機関が任意に参加できる(ただし報告時には患者の同意を要する)とされています。そのため評価機構には義務的報告と患者の同意を得た任意的報告の双方が集積されることになります。

  報告の方法は、原則として事故発生日もしくは発生を認識した日から2週間以内にネット上の専用回線を通じて報告を行うこととされており、報告された事例に関する追加情報は、郵送、医療事故防止センターにおける面談、専門家による現地訪問といった方法で収集されるとのことです。

  こうして収集された情報は医療事故防止センターにおいて専門家が分析を行い、プライバシーに配慮した報告書として広く公表されるそうです。また報告書を踏まえて行政や関係団体、個別企業に対して提言や要請を行うことも予定されています。

期待と不安~膨大な報告事例をどう分析していくのか

  スタートから5ヶ月が経過した現時点では、同事業に基づく報告書が公表された事例は未だ見あたらないようですが、全国の主要病院の相当の割合をカバーする事業ですので、日本の医療事故の実態を知るための貴重な情報が集積・分析・公表されることを期待したいところです。

  しかしながら、2003年度中に全国81カ所の特定機能病院において発生した死亡事故だけでも83件が把握されています(阿部知子衆院議員の質問主意書に対する厚労省回答による)。今回の事業の対象となる医療機関から死亡事故以外をも含む事故が報告された場合、その件数は膨大なものとなることが予想されます。

  たった1つの事故であっても、十分に原因分析して教訓を医療現場にフィードバックするには非常に大きなマンパワーを要すると思われますので、押し寄せる膨大な事故情報が十分に分析されて適切な報告書が作成されることになるのかどうか、引き続き注目していきたいと思います。