医療事故調査の在り方について

弁護士園田理(常任理事)(2005年6月センターニュース207号情報センター日誌より)

医療問題弁護団による意見書の発表

   平成17年5月、東京の医療問題弁護団によって、「医療事故調査の在り方に関する意見書」が発表されました(詳細は、同弁護団のホームページをご覧ください)。

  医療事故が発生した場合に当該医療機関内で行われる医療事故調査は、これまで各医療機関ごとの様々な考え方に基づき行われ、同調査のために医療事故調査委員会が設置される場合も、その組織形態や運営方法などは区々でした。

  上記意見書は、このような医療事故調査の現状に鑑み、医療事故調査や同調査委員会のあるべき姿について詳細な検討を加えたものです。

意見書の内容

  公表された上記意見書の概要を一部ご紹介します。

・医療事故調査の目的は、事故原因究明により、・当該医療機関における事故の再発防止だけでなく、・他の医療機関における同種事故の発生予防、さらには・被害者らの被害救済をも図る点にあると捉えるべき。

・医療法施行規則によって、医療機関は医療事故が発生した場合にはすべて医療事故調査を実施すべき義務があり、重大な事故事例では医療事故調査委員会を設置して調査を実施すべき義務がある。

・医療事故調査では、被害者らから初期の段階で意見聴取すべき。

・医療事故調査委員会を設置する場合、少なくとも外部委員として患者側弁護士や事故調査手法に知見を有する有識者が加わる形態で組織されるべき。委員会開催要項を事前に医療事故被害者らに伝え、同被害者らが求めれば、原則として議事の傍聴を認めるべき。認めない場合は速やかに議事録を同被害者らに交付すべき。

・医療事故報告書は被害者らに交付し、事故原因等につき説明すべき。

・医療事故調査の結果は原則公表すべき。公表に当たり被害者らのプライバシーに配慮すべき。

政府への要望書の提出

  医療問題弁護団では、上記意見書公表とともに、厚生労働大臣及び文部科学大臣宛に、・全国の医療機関が医療法施行規則に基づき、医療事故調査を実施するように、そして重大な事故事例については医療事故調査委員会を設置して調査を行うように指導されたい、・医療事故調査の在り方につき適切なガイドラインを作成し全国の医療機関に周知徹底させ指導されたい、との要望書を提出しています。

医療事故調査の実態を引き続き注視しよう

  弊センターも、「院内事故調査委員会について考える」と題して去る5月21日総会記念シンポジウムを開催致しましたが、上記意見書・要望書は誠に時宜を得たものだと思います。また、医療事故調査のあるべき姿を考えるに当たり非常に参考になります。

  医療事故の再発・発生予防、医療事故被害者らの被害救済という医療事故調査のあるべき目的に照らし、各医療機関における医療事故調査あるいは同調査委員会の実態が適切かについて、引き続き注意深く監視していく必要があると思います。