平成16年の医療過誤訴訟の概況~最高裁の統計より

弁護士堀康司(常任理事)(2005年7月センターニュース208号情報センター日誌より)


最高裁から平成16年の医事関係訴訟統計(概数)が発表されました。

新規提訴は1,100件を突破

 平成16年(1月~12月)の新受件数(地裁で新たに提訴された件数)は1,107件で、過去最高だった昨年(998件)から更に100件以上の伸びを見せました。平成7年(488件)と比較すると10年で227%増えたことになります。

 新受件数を診療科別にみると、総数1,087件(複数該当事案は重複計上)中、内科(272件)、外科(228件)、整形・形成外科(148件)、産婦人科(143件)、歯科(83件)の順となっています。

既済は微減、未済は再び増加し2,100件超に

  既済件数は1,004件で、平成15年(1,036件)に続き2年連続で1,000件を越えましたが、前年比では平成11年以来の減少に転じました。その結果、未済事件数は昨年より103件増加し、2,138件となりました。未済事件数は平成15年に一旦減少に転じました(平成14年:2,073件→平成15年:2,035件)ので、このままわずかずつでも減少傾向が続くかと思われたのですが、新受件数の伸びと既済件数の微減によって、再び増加に転じました。

審理期間短縮幅も鈍化

 平成16年の既済事件の平均審理期間は27.3ヶ月でした。平成12年(35.5ヶ月)以降、毎年2~3ヶ月ずつ短縮してきましたが、平成16年は短縮傾向こそ維持したものの、短縮の幅はぐっと狭くなりました(平成15年は27.7ヶ月)。

判決と和解の比率、認容率に著変なし

 平成16年の既済事件の終局区分は、判決405件(40.3%)、和解463件(46.1%)でした。また、判決の勝訴率(一部認容を含む)は39.4%でした。いずれも例年の傾向と大きな変化はなく、医療過誤訴訟の特徴である勝訴率の低さと和解率の高さは従前のままと言えます。