義務的報告制度、第2回報告の内容

弁護士園田理(常任理事)(2005年10月センターニュース211号情報センター日誌より)

第2回報告

  日本医療機能評価機構医療事故防止センターは去る7月29日付けで医療事故情報収集等事業第2回報告書を公表しました。

  医療事故の義務的報告制度(任意参加医療機関からの報告を含む)については、本欄でこれまでご紹介して来ましたが、本誌206号の本欄でご紹介した第1回報告に続く2回目の報告です。

  第2回報告では、本年4月~6月の3ヶ月分の報告も含め、制度発足の昨年10月から9ヶ月分の報告の概況と、個別テーマについての検討状況とが公表されています。

9ヶ月分の報告の概況

  第2回報告書によれば、544の医療機関(ただし本年6月30日現在)から9ヶ月間に合計889件の事故報告があり、報告義務医療機関(275施設・病床数総計14万7,947床)からの報告が889件中790件(88.9%)を占めているとのことです。任意参加医療機関からの事故報告が極めて少ない状況にはまだ変わりがないようです。

  また、今回の報告では9ヶ月間の報告件数別の報告義務医療機関数が明らかにされています。これによると、報告義務医療機関275施設中125施設(45.5%)については9ヶ月間で報告件数ゼロのようです。他方、9ヶ月間で41件以上の事故報告をした医療機関が2つあったとのことです。わずか2つの医療機関(0.7%に相当)が報告義務医療機関からの報告件数のうち1割を超える事故報告をしている一方、半数近い報告義務医療機関からは事故報告が全くありません。医療機関ごとの事故報告状況に相当バラツキのあることが明らかとなっています。これが、医療機関ごとの事故発生件数の違いをそのまま反映したものであるのか、それとも事故報告体制の違いに基づくものであるのか、検証を十分に行う必要があると思います。

個別テーマについての検討状況

  第1回報告以降、1)一般性・普遍性、2)発生頻度、・患者への影響度、3)防止可能性・回避可能性、4)教訓性といった観点から個別テーマが設定され、そのテーマに絞った分析・検討がなされています。そして、第2回報告では、(i)手術における異物残存、(ii)薬剤に関連した医療事故の2テーマについて、報告事故ごとの発生原因の分類整理などがなされています。

  ただ、事故発生を防止するための具体的方策の提言には至っていません。制度発足から9ヶ月余り経過したにすぎない段階ですから、無理なのかもしれませんが、9ヶ月間に訪問調査が行なわれたのが2件に止まっているようであり、分析調査の体制が十分であるのか、疑問がないとは言えません。

根本原因の分析に基づく提言を

  医療事故の発生予防・再発防止の観点から事故分析を行うに当たっては、事故発生直前の人為的ミスなどの直接的要因ではなく、医療プロセスや医療システムの欠陥などの根本原因(Root Cause)にまで掘り下げた分析が必要だと言われています。そしてそのためには、労を惜しまず詳細な事実調査を行うことが必要となります。

  医療事故防止センターによる更なる調査検討を期待しつつ、今後の報告・提言内容を見守りたいと思います。