医療法改正の動向

弁護士園田理(常任理事)(2006年2月センターニュース215号情報センター日誌より)

医療提供体制に関する審議会意見

  厚生労働省の設置した社会保障審議会医療部会は、平成17年12月8日、医療提供体制に関する意見をとりまとめました。この意見内容を踏まえて近々厚労省において医療法改正案が策定され、医療法の改正がなされると見込まれています。

意見の概要-患者の権利、医療安全との関連で

  審議会意見のうち、患者の権利や医療安全に関連すると思われる点の概要をいくつかご紹介します。

  まず第1点として、医療法の全体的な構造を、これまで施設規制法の性格が強かったものを、患者の視点に立ったものへと見直すとされています。

  第2点として、患者・国民の選択を支援する観点から医療や医療機関に関する情報提供を推進するとしています。より具体的には、・都道府県が医療機関から一定の情報を届け出させてインターネット等で公表する、・広告規制制度を見直し、個別列記ではなく、一定の性質を持った項目群ごとに規定する包括規定方式を導入し、広告可能な内容を相当程度拡大したりする、・その他、インターネットによる情報提供にガイドラインを設けてその普及を図る、入院時の入院診療計画の策定、患者への交付・説明を義務づける、EBMの普及を図る、といった様々な情報提供推進策を実施する、とされています。

  第3点として、医療安全対策を総合的に推進するとしています。具体的には、病院、診療所、助産所に対し、安全管理体制、院内感染制御体制、医薬品、医療機器の安全使用・管理体制についての基準を整備する、助産所に対し産科の嘱託医師の他に連携医療機関を定めるよう義務付ける、医療事故等事例の原因究明・分析に基づく再発防止策の検討を行う、といったことが挙げられています。

  第4点として、医療従事者の資質の向上を図るとしています。具体的には、医師や看護師などで行政処分を受けた者に対して再教育の受講を義務づけるとともに、長期の医業停止処分等の見直し、戒告の新設等の見直しを行う、専門医の育成のあり方について検討する、などとされています。

  意見書は、その他、医療機能の分化連携の推進、母子、救急、災害、へき地の各医療体制の整備、医療法人制度改革、医療を支える基盤の整備などにも言及されています。

意見の方向性-患者の視点、患者のため

  「患者の視点に立った、患者のための医療提供体制の改革を基本的な考え方とすべき」

 審議会ではこの共通認識のもとで議論がなされたとのことです。意見書の医療法改正の方向性も、自分が受ける医療や医療機関のことを知りたい、安全な医療を受けたいと願う患者の利益に概ね適ったもので、肯定的に評価できると思います。

今後の注目点

  今後は、実際の法改正が、患者の視点に立ち、患者のために、どのような内容でなされるか注目です。

  また意見書では医療関連死の原因究明制度の具体化に向けた検討を進める必要ありとされていますが、同制度に基づく原因究明結果が、単に再発防止策の検討に用いられるだけに止まらず、患者・遺族の被害救済のためにも活用されるような、真に患者・遺族の視点、患者・遺族のための制度設計が望まれます。