診療関連死の死因究明のあり方-厚労省がパブリックコメントの募集を開始-

弁護士園田理(常任理事)(2007年4月センターニュース229号情報センター日誌より)

厚労省が意見募集中

  厚生労働省は、平成19年3月、「診療行為に関連した死亡の死因究明等のあり方に関する課題と検討の方向性」と題する試案を公表し、同年4月20日まで意見を公募しています(詳細は、電子政府の総合窓口 パブコメ欄を参照ください)。

公表された試案の概要

  厚労省が公表した診療関連死の死因究明のあり方に関する検討課題やその方向性に関する試案の内容は、概略次のとおりです。

○診療関連死の死因究明を行う組織(調査組織)

・行政機関又はその中に置かれる委員会を中心に検討

・調査・評価委員会(仮称)と同委員会の指示の下で実務を担う事務局から構成

・検討課題は、死因究明のための現行の機構や制度(ex.監察医制度)との関係、調査組織の設置単位(全国単位、地方ブロック単位、都道府県単位)、調査実務担当者の人材育成のあり方など

○診療関連死の届出制度のあり方

・検討課題は、届出先(国又は都道府県が届出を受け付け、調査組織が調査する形か、調査組織が自ら届出を受け付ける形か)、届出対象となる診療関連死の範囲、医師法21条の異常死届出制度との関係など

○調査組織における調査のあり方

・検討課題は、死亡に至らない事例を届出・調査の対象とするか、遺族など医療機関側以外からの申出で調査を開始するか、解剖の必要性の判断基準など解剖の実施の仕方、電話受付から解剖実施まで迅速に行う仕組み、調査終了の基準、院内事故調査委員会等との関係や一定規模以上の病院等に対する院内事故調査委員会等の設置の義務付けの可否、調査過程・調査報告における遺族等に対する配慮など

○再発防止のための更なる取組

・検討課題は、調査報告書を通じて得られた知見や再発防止策等の集積・還元のあり方、再発防止策の医療機関における実施についての行政指導のあり方など

○行政処分、民事紛争及び刑事手続との関係

・検討課題は、調査結果・調査報告書が国による行政処分、当事者間の民事紛争、刑事手続でどう取り扱われるべきか

医療被害者・遺族の視点から多くの意見を

   医療被害者・遺族は「五つの願い」(原状回復、真相究明、反省謝罪、再発防止、損害賠償)をもっています。診療関連死の死因究明のあり方は、この医療被害者・遺族の願いに密接に関わる重要な問題で、多くの検討課題が含まれます。

  当センターも、昨年の総会で「不審な死をどう裁く」と題するシンポジウムを開催し、診療関連死をめぐる法的問題や死因究明をどう再発防止につなげていくかなどを議論しました(詳しくはシンポ報告集や2006年7月号の本欄を参照ください)。

  厚労省では、平成19年度に診療関連死の死因究明のあり方について有識者による検討会を開催する予定で、寄せられた意見も踏まえ検討を進めていくとのことです。当センターとしても厚労省へ意見を提出する予定ですが、どなたでも意見を送ることは可能ですので、是非、医療被害者・遺族の願いをより実現する方向で検討がなされるよう、たくさんの意見を厚労省へ届けましょう。