弁護士園田理(常任理事)(2007年8月センターニュース233号情報センター日誌より)
厚労省検討会での検討進む
厚生労働省は、診療関連死の死因究明のあり方について、本年3月に同省が公表した試案をたたき台とし、幅広く各界有識者を集めて議論、検討を行うべく、同年4月、「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」(座長:前田雅英首都大学東京法科大学院教授。以下「検討会」)を発足させました。
検討会は、本年4月20日を第1回とし、以後3週間に1回程度の頻度で精力的に開催されています。これまでは、寄せられたパブリックコメントの集約、遺族、医師、リスクマネージャーからのヒアリング、診療関連死の調査分析モデル事業の現状報告(第2回)、法医学会、病理学会、検察OBからのヒアリング(第3回)、診療関連死の調査分析モデル事業からの提言(第4回)などが順次行われてきて、議論、検討がなされてきています。
検討会での配布資料や議事録等が厚労省ホームページ上で公表されていますので、ご参照ください。
当センターの意見の概要
厚労省は、検討会設置に先立ち、診療関連死の死因究明のあり方についてパブコメを募集し、当センターも去る4月19日に厚労省に宛てて意見書を提出しました。
当センターが厚労省に診療関連死の死因究明のあり方として述べた意見の概要は、次のとおりです。
○真相究明、再発防止、医療安全を制度の基本理念とする。
○調査組織の設置は国が行い、中央に統轄機関を置いた上、都道府県単位あるいは地方ブロック単位で支部を設置する。
○調査組織の所管事務は、・診療関連死の死因・臨床経過の中立公正な究明、・再発防止策の策定、・遺族・医療機関双方に対する速やかな・・の結果報告、・再発防止策の実施状況の検証とする。
○医療機関が第1次的に自らの責任で十分な院内事故調査を行う。国は、院内事故調査委員会の構成(委員の半数以上を外部委員とし、その中に医療専門家や医療安全に造詣の深い法律家・市民などを含める等)や調査手順(遺族等からの事情聴取を含め、遺族等に経過報告し、意見陳述機会を確保する等)につき公正を担保しうる基準を法令等で定める。調査組織は、院内事故調査の上記基準適合性などの監視・監督、調査報告書の検証を行い、上記・~・を行い、調査結果、再発防止策の公表も行う。調査組織には当該医療機関への立入調査権限を与える。調査組織は、院内事故調査が不公正・不適切と判断した場合は自ら調査を行う。かかる場合、国は当該医療機関に保険医療機関指定取消等の厳格な処分を科す。
○自ら院内事故調査委員会を設置困難な小規模医療機関の場合は、法人格を有する学会等が院外事故調査委員会を設置する。調査組織は、上記基準適合性などの監視・監督、調査報告書の検証等、上記同様の事務を行う。
○調査組織は死因調査のため解剖システムを構築する。死因調査に当たっては解剖実施を原則とする。
○調査組織の構成も公正さ・透明性確保が求められ、医療専門家と医療安全に造詣の深い法律家・市民などを構成員とする。
○診療関連死につき死亡から24時間以内の調査組織への届出を医療機関管理者に法的に義務付ける。同義務付けがなされた場合に医師法21条に除外規定を設ける。届出義務ある診療関連死の範囲は、日本学術会議平成17年6月公表の異常死の定義(遺族等が担当医の死因説明の合理性に疑義持つ場合も含める)を参考に画定する。
○診療関連で重大結果(重篤で永続的な障害等)が生じた事例も、同様の原因調査、届出義務の対象に含めるよう検討を継続する。
○遺族等からの申出による調査開始も可能とする。
○調査組織の調査結果を参照しつつ、裁判に至ることなく迅速に賠償を実現する無過失補償制度などの仕組みを別途検討する。
今後の議論展開に注目
死因究明から遺族等の被害救済へとどうつなげていくのか、患者側も医療側も納得していないという現在の訴訟による医療紛争処理をどう変えていくことが可能かなど、検討すべき課題は多く、また困難なものも含まれます。
中立・公正で遺族等にとって納得のいく死因究明がなされるよう、今後も検討会での議論、検討から目が離せません。