弁護士堀康司(常任理事)(2007年12月センターニュース237号情報センター日誌より)
第二次試案に対するパブコメを提出
2007年11月2日、医療事故情報センターは、厚労省による診療関連死の死因究明に関する第二次試案に対し、パブリックコメントを提出しました。
死因究明の位置付け
第二次試案は、医療事故の再発防止、医療の質・安全性の向上を診療関連死の死因究明の目的として位置付けており、こうした点は、当センターがこれまで表明してきた認識と合致しています。そこで今回のパブリックコメントでは、かかる位置付けで診療関連死の死因究明を進めることへの賛意を示した上で、こうした目的にふさわしい組織作りのため、行政が一層尽力することを求めました。
組織のあり方~内閣府下の独立行政委員会
他方、第二次試案では、診療関連死の死因究明を行う組織を「医療事故調査委員会」と仮称した上で、これを厚労省内の行政機関として設置することが提案されています。
しかしながら、診療関連死の死因究明を通じた医療安全の実現は、国民全体の願いであり、今回の制度は国家的事業として位置付けられる必要があります。また、死因究明組織が調査の結果を踏まえて医療安全を実現するためには、厚労省のみならず、文科省(医療従事者養成)、総務省・消防庁(救急搬送)、経産省(医療機器規格)、財務省(安全対策財源)等にまたがる広汎な行政領域について、独立した立場から勧告・建議を行うことが求められます。
そこで当センターは、今回のパブコメで、調査組織の名称を「医療安全委員会」とした上で、行政全体を統括・調整する立場にある内閣府の下に、独立行政委員会として設置すべきことを提言しました。
なお食品安全分野については、内閣府の下の独立行政委員会として食品安全委員会が設置され、厚労省・農水省等の関係省庁から独立した立場が確保されています。食品安全と同様に国民的関心事である医療安全についても、同じ位置付けによる組織の設置を実現すべきです。
診療関連死の届出について
診療関連死の死因究明を行うには、まず、医療安全委員会が診療関連死をすべて把握することが不可欠です。そこで、当センターは、診療関連死の医療安全委員会への届出を医療機関に法的に義務づけるべきであり、届出懈怠には何らかのペナルティを科すことを法的に明確化しないかぎり、診療関連死を医師法21条の異状死届出義務から除外してはならないことを提言しました。
院内事故調査との関係
第二次試案では、診療関連死の死因究明における院内事故調査の重要性が指摘されていますが、その記述はわずか2行に留まっており、具体的位置付けが明確にされていません。
他人が検討したお仕着せの対策に従うだけでは、真の医療安全の実現は期待できません。一定規模以上の医療機関は、死因究明や再発防止策の立案をなしうる力を、自ら備えることが不可欠です。
そこで当センターは、医療安全委員会による調査プロセスの中に、院内事故調査の実施が不可欠であることを法的に明確化し、院内事故調査のクオリティを確保するために、その組織・調査手法等について法律やガイドラインで規定すべきであることを提言しました。なお、一定規模以下の医療機関の場合には、学会等が設置する院外事故調査委員会を活用すべきであることについても触れました。
制度の全体像
診療関連死の死因究明組織の議論は、いよいよ大詰めとなってきました。今回のパブコメでは、当センターが考える制度の全体像を、2007年10月26日に厚労省検討会で配付された加藤良夫委員の私案(前頁参照)のとおりに捉えることが適切であることを指摘しました。
こうしたグランドデザインに沿った制度が実現できるよう、当センターは引き続き行動を続けていきます。