事例抽出力の地域格差は27倍~モデル事業地域別集約結果より

弁護士堀康司(常任理事)(2009年2月センターニュース251号情報センター日誌より)

事故調検討会でモデル事業のヒアリングを実施

  昨年12月1日、診療行為に関連した死亡に係る死因究明等のあり方に関する検討会の第17回会合が、厚労省において開催されました。昨年10月に再開されてから、3回目となるこの会合では、2005年9月にスタートした診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業の現況について、モデル事業中央事務局長である山口徹委員から報告がなされた後、参考人3名(松本博志札幌地域代表、奥村明之進大阪地域臨床評価医、田浦和歌子東京地域調整看護師)からのヒアリングが実施されました。

モデル事業の現況

  山口委員からは、モデル事業が全国10地域まで拡大し、これまでに医療系の38学会から2,595名の臨床医が事前登録を行い、75事例に対し679名が実際に事例評価に参加したことが報告されました。また、解剖体制についても、31施設が解剖協力施設として登録し、このうち20施設において、実際に解剖が実施されたとのことですので、モデル事業を開始したことによって、診療関連死を調査するためのシステム整備はそれなりに進展しつつあることがうかがわれます。なお、1件あたりのコストは、平均で94万円とのことでした。

予想を下回る受付件数

  他方、モデル事業で受け付けた事例数は、平成20年11月17日現在で82事例に留まりました。これは予想をかなり下回る件数です。

  地域別の事例数一覧表によれば、モデル事業事務局に何らかの連絡等が入りながら、正式の受付に至らなかった事例が150件あったことが指摘されています。うち、遺族の同意が得られなかったものは47例、司法解剖または行政解剖となったものは26例でした。問題は、当該医療機関からモデル事業実施の依頼がなかったため、正式な受付に至らなかったものが26例も含まれていることです。これらの医療機関が死因究明に対して協力する姿勢を示していれば、受付事例数が3割以上増えていたことになりますので、非常に残念です。また、解剖の体制が取れなかったために正式な受付に至らなかった例も11件存在します。

  こうした事例が、正式な受付に至らないままとならないよう、運営上の工夫を進める必要があります。

事例抽出力に大きな地域差

  また、地域別の事例数一覧表の数字を踏まえて、以下の表のとおり、各地域について、(受付事例数+受付に至らなかった事例数)÷(窓口開設月数×域内人口)という数値を概算し、開設間もない宮城と岡山を除いて比較すると、数値が最小となった愛知と、最大の札幌との間には、約27倍もの開きがあることがわかります。

  上記参考人らからは、モデル事業の現場では、遺族から感謝されることも多いということが報告されています。そうした有意義な事業を、より充実させていくためにも、事例抽出能力の高い地域でモデル事業窓口の周知・活用が進んでいる理由を探るとともに、事例抽出能力の低い地域に関しては、早急に、窓口が活用されない理由を検証することが必要です。