弁護士松山健(嘱託)(2010年2月センターニュース263号情報センター日誌より)
年初より、医療事故情報センターの嘱託として業務を開始させていただいております松山健と申します。司法修習は56期で弁護士6年目になります。
嘱託弁護士はこれまで2000年から初代の堀先生、2004年から園田先生が加わられて二人体制で進んできました。このお二人の先輩の働きが素晴らしいものであったことは皆様ご存じの通りです。いきなり同じレベルをこなそうと気負っても空回りするだけだと思いますので、初心を忘れずに亀のようにコツコツと進んでまいりたいと思います。
私が医療事件に関心を持ったのは、司法修習生のころでした。弁護修習(会員の池田伸之先生の所でした)が始まってすぐに妹が悪性リンパ腫に罹っていることが分かりました。その数ヶ月前に胸が痛いということで、総合病院の救急外来で診てもらった際のレントゲンに写っていた影の見落としのため、ほかの病院に診察に行っても、付き添った母親が総合病院でレントゲンはとってもらっていると医師に言うため、レントゲンをとるチャンスがなく、再度、同じ総合病院で検査入院したときには手遅れに近いほどまでに腫瘍が大きくなってしまっていました。また、病名告知の際の患者や家族への配慮のない対応など、病院に対する不信感を持つ場面が多々ありました。そういう状況で、池田先生の扱われる医療事件に接し、患者や家族の人たちの気持ちが自分のことのように感じられ、医療事件に関わりたいという気持ちが生まれてきました。
その後、同じ病院の血液免疫内科の先生に力を注いでもらって、妹は寛解状態になり、退院でき、すでに5年以上が経過して完治となっています。結局、最初に誤診したのも、治してくれたのも、医師は別ですが、同じ総合病院でした。妹のほかにも、弟がクローン病、父が胃がん等々、家族に大病を患う者が多く、ときに医療に対する不信感を味わうこともありながらも、最終的には医師や看護師の皆さんに助けていただいており、医療関係者に対しては常々深い感謝と尊敬の念を抱いております。
他方で、患者さんや家族が、医師に命を預ける際の心細い不安な気持ちや医師からの説明が不十分であったり、誤診の疑いを持ったとき、あるいは、たくさんいる患者の一人として機械的に扱われているように感じたときに、頼りにしているだけに残念な気持ちを持つことは実感としてよくわかります(このことは、弁護士として依頼者の方と接する際にも意識することです)。
そのため、私は、医療側代理人ではなく、患者側代理人として、医療に対する恩返しをしたいと思っています。自分の痛いところを突いてくれる存在というものは煙たいものですが、なくてはならないものです。患者側代理人の立場に立つ弁護士の多くと同じく、私も、患者の立場で医療側に外側から働きかけることで、よりよい医療の実現を願っています。
さて、今年はちょうど情報センター発足20周年の節目の年にあたります。10年前に発行された記念誌を読むと、この10年間で、医療事故をとりまく状況が大きく変わったことを感じます。医療過誤冬の時代といわれる現在ですが、会員数は着実に増加しており、これからも患者側弁護士のネットワークとしての情報センターに寄せられる期待と果たすべき役割はますます大きくなっていくものと思います。
会員の皆様から情報センターにどのようなサービスの提供が求められているのか意識し、情報センターがさらに役割を果たしていけるように微力ながら尽力したいと思っております。
何とぞ、ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。