弁護士松山健(嘱託)(2010年11月センターニュース272号情報センター日誌より)
(財)日本医療機能評価機構(評価機構)は、10月13日、四半期毎に公表している「医療事故情報収集等事業 第22回報告書」を公表しました。
任意参加機関の増加
先月号も含めて、本欄でも度々取り上げている評価機構の医療事故情報収集事業ですが、この事業において医療事故情報の報告を行う医療機関を再確認しておきますと、平成16年の厚生労働省令第133号で医療事故事例の報告を義務付けられた報告義務対象医療機関(・国立高度専門医療センター及び国立ハンセン病療養所、・独立行政法人国立病院機構の開設する病院、・学校教育法に基づく大学の附属施設である病院(病院分院を除く)、・特定機能病院)と、報告義務対象医療機関以外に任意で登録を経て本事業に参加している参加登録申請医療機関の2つに分かれます。
報告義務対象医療機関の数は、平成16年10月の事業開始当時から270台を推移し、平成22年6月30日現在で272施設と、ほぼ変動はありません。これに対して、参加登録申請医療機関は、事業開始後数カ月で250施設に達した後は250~300の間で変動を続け、本欄でも頭打ち状態で伸び悩みを見せていた状況をご報告したことがありましたが、平成21年の4~6月の間にそれまでの260台から420台に、その後平成22年1月にさらに530台に急増し、その後も漸増し6月30日現在で554施設となっています。
任意参加機関からの報告件数の伸び
本年1月から6月までの月別報告件数の合計は、報告義務対象医療機関は1,005件で、年間報告件数が1,895件と事業開始後最多だった昨年の同時期の945件をすでに上回っています。また、参加登録申請医療機関では、231件で、昨年同時期の66件を大きく超えるばかりか昨年の年間合計169件をもすでに上回っています。参加登録申請医療機関からの報告件数の伸びについて、報告書では、参加医療機関の増加が一因であるとの推測及び事業開始後5年を経て事故報告が次第に定着してきたとの認識が示されています。
Webでの情報提供
報告書は、Web(http://www.med-safe.jp/)にてダウンロードできますが、本年7月に公表された第21回報告書からは、効率的な情報提供を実現すべく、報告書とWebの役割分担が行われ、第20回以前の報告書と比べて、第21回、第22回報告書はいずれも約140頁と、従来よりも100頁以上スリム化され、その分、Web上の情報掲載量が増やされています。具体的には、報告書には主要な図表やテーマ分析の結果を掲載することとし、Webにはそれらの図表も再掲するとともに、さらに詳細な図表や報告項目の一覧、参加医療機関一覧等の情報が掲載されています。また、Web上に報告事例のデータベースを開設し、本年1月以降に報告された全ての事例が検索、閲覧できるようになっています。
報告義務の履行確保
前号の本欄で、8月31日に評価機構が、医療事故情報収集事業の平成21年年報を公表したことをお伝えし、平成21年は報告義務対象医療機関のうち、ゼロ報告の医療機関が273施設中61施設(22.3%)と相当数に上っており、報告義務の履行確保が望まれる旨お伝えしました。この点について、厚労省は、本年5月17日付で、各自治体の長に対して、報告義務対象医療機関に対して評価機構に対する事故事例報告が適切になされるよう確認、指導を行うよう医療機関への立ち入り検査にあたっての留意事項として医政局長通知を発する形で対処しているようです。この通知の効果のほどは、本年下半期の報告の公表を待って確認するほかありませんが、依然として評価機構や事故報告義務を負う医療機関には、医療事故情報収集事業の趣旨を無にしない真剣な取り組みが求められるところです。