新モデル事業のその後~日本医療安全調査機構における検討状況

弁護士堀康司(常任理事)(2010年12月センターニュース273号情報センター日誌より)

新モデル事業スタートから半年

 平成17年にスタートした「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」は、本年4月から2年間、実施期間が延長され、新たに設立された日本医療安全調査機構が実施主体となりました。新モデル事業の実情について、同機構の公表した資料に基づいて整理したいと思います。

第1回運営委員会議事録より

 新モデル事業の第1回運営委員会は本年6月3日に開催されました。

  この会合では、厚労省から、モデル事業見直しに当たっての主な留意事項として、1)全国展開を視野に入れ、実現可能性を十分考慮すること、2)死亡時画像診断を活用すること、3)院内事故調査委員会の調査内容をレビューする方式も取り入れること、の3点が提示されました。また、遺体を移動について遺族の了解を得られない場合には、事例が発生した医療機関において、その医療機関の病理医が解剖する(中立性確保のためにモデル事業から立ち会いを派遣する)という方法も選択できるようにすることや、経験を活かすために評価委員会のメンバーの一部を固定化することに加え、調査手順の簡素化・標準化、受付事例の拡大にむけた積極的広報、再発防止策の全国展開のために日本医療機能評価機構と連携をはかること等、新モデル事業の方向性について意見交換がなされました。

第2回運営委員会配付資料より

 本年9月7日には、第2回運営委員会が開催されたようですが、11月22日現在、その議事録は公表されていませんので、当日の議論の詳細は不明です。

  ただ、配付資料によれば、本年8月30日にワーキング部会が開催され、1)死亡時画像診断活用については、日本医学放射線学会と連携を進め、体制のとれる地域から暫定的に、運用フローチャートに基づいて試行すること、2)事例が発生した医療機関において解剖を行う場合には、解剖調査担当医(法医又は病理医)1名と臨床専門医1名が立ち会い、モデル事業から解剖施設利用費用を支払い、ホルマリン固定された臓器は、解剖調査担当医の解剖施設に5年間保存すること、3)診療関連死調査人材育成班平成21年度報告書の提案する「外部参加型院内事故特別調査委員会による先行院内調査」を想定して、院内調査レビュー方式を試行していくこと等について、叩き台としての議論がなされたことがわかります。

  また配付資料からは、本年4月~8月末までの5ヶ月間に、新たに26例の相談があり、うち8例について評価が開始されたことが明らかとされています。新モデル事業の広報活動は、各地地域代表らが地元関係各所に訪問して説明を行う等、てこ入れが図られていますが、このペースを前提とした場合、評価対象となる事例は年間20件程度と予想されますので、事例拡大に向けた努力はこれからも必要となるものと考えられます。

時間との勝負

 以上のように、モデル事業は、全国展開可能な方式の在り方を模索しながら継続されていますが、事例数の大幅な拡大傾向はみられないまま、残る事業期間が1年半を切っています。新モデル事業では、以前にも増して、スピード感あふれる作業が求められていますが、運営委員会の議事録公開に2ヶ月以上を要しており、大変残念です。同種の事業である産科医療補償制度の各種会合の議事録は、概ね1ヶ月程度で公表されています。予算規模の違いなど、いろいろな壁はあるかもしれませんが、社会の関心を集めて事例を拡大していくためにも、オープンでタイムリーな議論を行うことを可能とする情報提供体制が強く期待されます。