外貌障害等級、見直しされる~違憲判決を踏まえて

弁護士松山健(嘱託)(2011年3月センターニュース276号情報センター日誌より)

外貌醜状障害

 外貌(頭部、顔面部、頸部のごとく、上肢及び下肢以外の日常露出する部分。以下、出典の表記に従って「外貌」、「外ぼう」の表記が区々となります。)の醜状障害に関して、従来、障害等級表では、「外貌に著しい醜状を残すもの」は、女性は7級、 男性は12級、「外貌に醜状を残すもの」は、女性は12級、男性は14級とされてきました。

違憲判決に基づく見直し

 この点、京都地判平成22年5月27日(判タ2093号72頁 )は、労災による男性の著しい外貌の醜状障害につき、女性の7級に対して12級と定める労災保険法の「障害等級表」 は憲法第14条に反すると判断し、判決は国の控訴断念を受けて6月に確定しました。

  この判決の趣旨を踏まえて、厚労省は、平成22年8月、「外ぼう障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会」を設置し、労災保険の障害等級の外貌の醜状に係る男女差の見直しについて全3回にわたって検討会を開催し、平成22年12月1日、報告書が公表されました。

検討会の議論

 検討会では、判決の趣旨の検討、男女差を残すべきやむを得ない事情の存否、男女差を解消する方向での障害等級設定のあり方の観点から検討を行い、・男女別になっている外貌障害に係る障害等級の規定を改め、性別に関わりない規定とすること、・現行の女性の等級を基本として改正すること、・その上、外貌障害に係る医療技術の進展を踏まえ、醜状の程度を相当程度軽減できるとされる障害(面的な広がりを持たない醜状、特に線状痕については医療技術の向上が見られるとの検討がされています。)については、新たに設定する中間的な障害等級により評価することを内容とする障害等級表見直し案を提案し、これを受けて、次のような内容で障害等級表と認定基準が改正され、平成23年2月1日から施行となっています。

新しい障害等級表及び認定基準(斜体部が変更点)

[等級表] 

    改正後                                               現 行 

障害等級 身体障害                                    障害等級 身体障害 

第7級 12   外貌に著しい醜状を残すもの       第7級 女性の外貌に著しい醜状を残すもの 

第9級 11の2 外貌に相当程度の醜状を残すもの 第9級 なし

     (新設) 

第12級 13 削除                                       第12級 13 男性の外貌に著しい醜状を残すもの

      14 外貌に醜状を残すもの                            14 女性の外貌に醜状を残すもの 

第14級 10 (削除)                                     第14級 10 男性の外貌に醜状を残すもの

[障害等級認定基準]

○障害等級第9級の11の2「外貌に相当程度の醜状を残すもの」とは、原則として、顔面部の長さ5センチメートル以上の線状痕で、人目につく程度のものをいう

まとめ

 今回の改正のポイントをまとめると次の通りです。

1)男女の区別は解消

2)外貌醜状の等級は12級以上となる

3)「著しい醜状」、「相当程度の醜状」、「醜状」の3段階評価となった

4)従来7級評価された程度の醜状であっても、医学的に醜状を相当程度軽減できるとされる障害については新設9級と評価される可能性がある


 以上は、労災保険の分野に関する改正ですが、検討会では自賠責等他分野への影響も配慮した検討を行っており、今後、自賠責等、労災以外の分野でも等級表の見直しが進められていく見込みです。医療事故においても、外貌醜状が残った事例では、損害論において以上の趣旨を踏まえた主張を検討することになります。