6年間の事故報告状況は?~平成22年年報公表を受けて

弁護士園田理(常任理事)(2011年10月センターニュース283号情報センター日誌より)

この6年間の事故報告状況は?

  去る8月30日、(財)日本医療機能評価機構(評価機構)が、医療事故情報収集事業の平成22年年報を公表しました。

  本欄では、これまで、事故報告義務を負っているにもかかわらず、年間事故報告件数がゼロの医療機関数が相当数に上っており、それら医療機関で事故報告義務が無視されているのではないか、との問題提起をしてきました。

  そこで、この問題意識の下、平成17年から平成22年までの6年分の年報データを基にグラフ化し、この6年間の事故報告状況を概観してみます。

依然4分の1近くが事故報告ゼロ

 「報告件数毎の割合」グラフは、事故報告義務を負う医療機関の中で、どれくらいの割合の医療機関が年間何件くらい事故報告しているかをグラフ化したものです。

  年間10件を超えて事故報告する医療機関の割合が徐々に増えて来ているものの、未だ大多数の医療機関が年間10件以下の事故報告に止まっており、年間事故報告ゼロの医療機関も、未だ4分の1近くあります。

病床数1000以上でも年間事故報告ゼロが15%前後

 「報告ゼロの割合推移(病床数毎)」グラフは、事故報告義務を負う医療機関を病床数毎に区分し、それぞれの区分で年間事故報告ゼロの医療機関の割合がどうか、その割合がこの6年でどう推移してきているかをグラフ化したものです。

  病床数が少なければ報告すべき医療事故が年間ゼロということも想定されなくはありませんが、病床数が1000以上の医療機関でも15%前後が年間1件も医療事故を報告していないという実情があります。病床数800以上1000未満の医療機関よりも病床数1000以上の医療機関の方が事故報告ゼロの割合が多いことからすると、病床数1000以上の医療機関の中に医療事故情報収集事業の趣旨を理解されない医療機関の割合が多いのかもしれません。病床数の比較的多い医療機関で平成22年に事故報告ゼロの割合が増えているのも気になります。

学校法人開設の医療機関で4割前後が事故報告ゼロ

 「報告ゼロの割合推移(開設者毎)」グラフは、事故報告義務を負う医療機関を開設者毎に分け、それぞれ年間事故報告ゼロの医療機関の割合がどうか、その割合がこの6年でどう推移してきているかをグラフ化したものです。

  国や自治体が開設した医療機関に比べ、学校法人開設の医療機関においては、年間1件も事故報告がなされない割合が明らかに多いことが分かります。その割合は、4割前後にも達しています。国の指導等が徹底されにくいのかもしれません。

事故情報収集に一層の努力を

  徐々に事故報告件数が増えつつあるものの、年間事故報告ゼロの医療機関が依然として4分の1近くあるなど、事故報告義務の履行が十分になされているとは未だ到底言えません。

  医療安全に有用な情報を広く収集し医療機関や国民と共有するためにも、年間事故報告ゼロの医療機関に対しては、誠実な事故報告義務の履行を、それ以外の医療機関や評価機構には、事故情報の収集により一層の努力を、それぞれ要望したいと思います。

※グラフはこちらをご参照ください
111001センターニュースNo.283.pdf
PDFファイル 453.2 KB