救急医療体制のあり方に関する検討会、中間取りまとめ

弁護士松山健(嘱託)(2013年11月センターニュース308号情報センター日誌より)


9月に公表された厚労省の救急医療体制のあり方に関する検討会の中間取りまとめ案についてご報告します。

背 景

 平成24年(速報値)の救急出動件数は580万件(年間)と、前年に引き続いて過去最多を更新し、10年前の3割近く増加しています。
 救急救命士制度の運用に関し、病院前救護における医療の質の確保の観点から、メディカルコントロール(MC)体制の確立や救命救急センターの整備等が推進されてきましたが、救急救命士の特定行為件数の増大等に伴い、MCに従事する医師は通常診療を行いながら特定行為の指示や検証作業を行うため、負担が増大しているとされます。
 これに加えて、高齢化社会の到来による高齢者搬送件数の増大や地域における救急医療の確保、小児救急、母体救命、精神科救急等他科との連携その他、今後の救急医療体制には課題が山積しています。

検討課題

 紙面の関係上、一部の論点のみご紹介します。
○メディカルコントロール体制
 現在、各都道府県に設置されているMC協議会を医療法の体系の中に位置づけ、人的・経済的に必要な措置を講じられることを検討する、具体的には、MCに従事する医師がMC業務に集中できる身分や業務時間、給与を確保し、適切な教育体制を構築する、とします。
○高齢者搬送の増加
 高齢者は複数の診療科を受診している可能性が高く病歴の把握に時間を要するため、救急隊による医療機関の照会回数の増加や現場滞在時間の延長につながりやすいために、各地で救急医療情報キット(かかりつけ医や持病などの医療情報や、薬剤情報提供書・診察券・健康保険証等の写し、本人の写真などの情報を専用の容器に入れ、自宅に保管しておくもの)やインターネット上の情報共有などの取り組みが紹介されています。
○院内トリアージ
 トリアージは、災害や事故現場で4色のトリアージタグを付して分類するように、触診や聴診により病気や怪我の重症度や緊急性を判定し、治療の優先順位を決めるものですが、これを救急外来でも行うことを院内トリアージといいます。平成24年の診療報酬改定で「院内トリアージ実施料」が導入され、普及が進んでいるとのことです。

その他の検討課題

○救命医療機関・救急医療体制
・救命救急センター
・二次救急医療機関・初期救急医療機関
○小児救急電話相談事業
○救急患者の搬送
・ドクターヘリ
・高次医療機関からの転院搬送
○救急医療機関と専門医療機関の連携
・小児医療機関における救急医療機関との連携
・母体救命事案における救急医療機関との連携
・身体合併症があり、精神疾患を有する患者の受け入れ体制の構築について

今後の検討事項と方向性

 「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」は、平成25年8月に「血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与」および「心肺機能停止前の静脈路確保の実施」の2つの特定行為の拡大を内容とする報告書をまとめ、今後、ますますMC体制の整備の重要性が増していきます。
 以上のように、課題は多く、他分野に跨るだけに、しっかり見守っていく必要があります。