日医、リピーター医師を直接再教育へ

弁護士松山健(嘱託)(2013年5月センターニュース302号情報センター日誌より)

中間答申

 日本医師会「会員の倫理・質向上委員会」(以下、「向上委員会」)は、平成25年4月17日、同年2月付で医師会長に答申していた「医療事故を繰り返す医師に対する『(仮称)指導改善委員会』の設置について―日本医師会医師賠償責任保険制度の運用における医師会内の自浄作用活性化を目指して―」と題する中間答申を公表しましたので、ご報告します。

提言の背景

日医のこれまでの取り組み

 平成10年に日医に設置された向上委員会は、平成12年の「医の倫理綱領」の制定や、平成16年の「医の職業倫理指針」の策定などを行ってきました。また、日医は、平成14年には「自浄作用活性化委員会」を設置し、平成17年に「自浄作用活性化推進に向けて」のハンドブックを発行し、患者の安全対策を徹底する観点から、平成15年12月の「医療事故防止緊急対策合同委員会」からの提言を受けて平成17年からは毎年、「医療事故防止研修会」を開催しています。また、平成22・23年度の向上委員会の答申では、米仏独の医師の不正行為や不適切な医療行為に対する行政処分や我が国の弁護士会での懲戒処分を参考にした研究報告もなされています。

依然として変わらない現状

 これらの取り組みにもかかわらず、平成24年3月には、厚労省が医道審議会の答申を受けて、医師・歯科医師合わせて38名の行政処分を発表し、この中に3年の間に医療ミスを4件繰り返したとして、被害者らが免許取り消しを求めていた医師が含まれていたことで、リピーター医師として初めて行政処分がなされたと報道があったことは記憶に新しいところです。同年11月には44名の行政処分が発表されました。年2回実施される行政処分ですが、近年の処分者数の推移は、平成19年度111名、20年度104名、21年度91名、22年度70名、23年度89名、24年度82名と著変なく、目に見えて対策の成果はあがってはいない状況です。

日医の直接の自律的対応へ

  17年から毎年開催されている「医療事故防止研修会」は受講者を限定しない形式であり、また、医師賠償責任保険に付託されてくる医事紛争を調査する医賠責調査委員会においては、医療行為の内容や紛争発生の頻度などから問題会員を特定し、同委員会の名において都道府県医師会に「注意・指導」を要請してはいますが、地域医師会頼みとなる面は否めませんでした。日医が4月に公益社団法人に移行するタイミングを相俟って、日医主導でのリピーター医師に対する再教育への取り組みを示すことが喫緊の課題であるとして提言がなされました。

向上委員会の提言

 提言は、①医賠責調査委員会において付託される事案から医療事故を繰り返す医師について同調査委員会が選定し、会長に報告する、②会長は、当該医師について「(仮称)指導・改善委員会」に諮問し、③同委員会は、都道府県医師会と連携して、問題のある医師の医療事故事例を分析・調査し、個々のケースについて具体的な指導・改善の目標、その目標を達成するための方策について決定し、④指導・改善後の評価についても責任を持つものとするとし、⑤詳細な委員会運営や裁定委員会との関係は別途検討を要するとします。