弁護士堀康司(常任理事)(2013年8月センターニュース305号情報センター日誌より)
平成21年出生児の申請期限が迫る
産科医療補償制度は、平成21年以降に出生した児が対象とされています。補償の申請期限は満5歳の誕生日ですので、平成21年に生まれた児は、来年の誕生日で申請の〆切を迎えるということになります。
補償対象者数の推計は年481人
同制度に設置された医学的調査専門委員会は、沖縄県・栃木県・三重県を調査した結果を本年7月に報告しています。この報告書では、年間の補償対象者数は、沖縄調査によれば505人~565人、栃木調査によれば1003人~1226人、三重調査によれば941人~1579人(一部の施設の調査結果をもとに推計して、多めに見積もった場合は496人)と推計されています。栃木・三重では、療育施設と身障者更生相談所を調査対象とした結果、突合による重複除外が不十分だった可能性等が示唆されるということで、専門委員会は、沖縄調査の結果を重視した上で、年間の補償対象者数を481人(95%信頼区間:340人~623人)と算出しています。
推計と実際の申請件数に大きな差
しかし、本年6月末時点で、平成21年生まれの児への補償件数は205件にとどまります。
専門委員会による調査では、平成21年生まれで補償対象となりうる児が、沖縄では5~8例、栃木では6~11例、三重では4~21例程度確認されています。しかし、これまでに実際に申請があって補償対象と認定されたのは、沖縄2例、栃木4例、三重2例にとどまります。制度運営委員会は、補償対象者数が推計を下回っている原因として、補償対象範囲の周知が不十分である(在胎33週以上かつ出生体重2000g以上なら、分娩中の異常や出生時の仮死がなくても補償対象となることが十分に周知されていないこと等)ことなどが理由であると分析しています。
緊急対策会議の立ち上げへ
制度の周知の努力の結果、平成25年3月から同年6月の、平成21年生まれの児の請求件数は、前年同月比で約3.5倍となったそうです。しかし、まだ十分に周知が進んでいないと考えられるため、同制度では「補償申請の促進に関する緊急対策会議」を立ち上げ8月中にも第1回会合を開催する予定となっています。
剰余金による対象拡大の検討を開始
今年7月23日開催の制度運営委員会では、481人という推計を前提とすると、平成27年中頃以降、毎年120億円から140億円の剰余金が保険会社から返戻される見込みであることが報告されました。この剰余金の扱いについては、制度運営委員会で9月中を目途として基本的な考え方をとりまとめた上で、社会保障審議会医療保険部会においても議論される予定とのことです。その際には、平成27年以降の同制度に関して、補償対象となる脳性麻痺の基準(重症度、在胎週数・出生体重、除外基準等)や補償水準等に関する見直しを検討し、平成25年内を目途に結論を得る予定とのことです。
患者の立場から見てよりよい制度となるよう、弊センターからも積極的に意見を述べていきたいと考えています。