弁護士堀康司(常任理事)(2013年12月センターニュース309号情報センター日誌より)
韓国からの視察団が来日
今月16日の正午から約2時間半にわたり、韓国医療問題を考える弁護士会(キム・ソンス代表)との意見交換会が開催されました。同会は、医療問題に関心を持つ韓国の弁護士約150名によって構成される団体で、患者側だけでなく、医療機関側でも事件を取り扱う弁護士も一緒にメンバーとなって、定期的に勉強会を開催しています。昨年10月に日本の患者側弁護士らの有志による視察団が韓国の医療紛争調停仲裁院等を視察した際、同会関係者と知己を得たことなどをきっかけに、今回の来日が実現しました。
韓国からはいずれもソウルの法律事務所に所属する12名が、前日からホテル金沢において開催された医療問題弁護団・研究会全国交流集会の全日程にオブザーバーとして参加しました。そして、集会終了後、同ホテル内において、日本の患者側弁護士17名との意見交換会が開催されました。
日本の弁護団・研究会に対する強い関心
意見交換会では、まず日本側から、医療事故情報センターと、札幌・東京・金沢・名古屋・大阪・九州山口の各弁護団・研究会について、設立経緯等を説明しました。韓国側でも、将来的に日本の弁護団・研究会と同様の活動を目指したいと考えているそうで、各団体の組織構成や財政面などについても意見交換を行いました。
韓国仲裁院1年間の成果
引き続いて韓国側のヒョン・ドゥリュン弁護士から、韓国仲裁院の現状をご説明いただきました。昨年4月の仲裁院の発足後、今年の3月末までの1年間に803件の申し立てがあり、医療機関側が手続きに応諾した事案は299件と全体の約4割にとどまったものの、応諾事案については、133件で調停が成立(合意98件、調停決定33件)したそうです(調停成立率は83.1%)。成立事案の平均調停金額は1件あたり673万ウォンとのことでした。もっぱら病院側の代理人を担当するヒョン氏は、少額事案については積極的に応諾するよう病院に指導しているものの、高額事案の応諾にはまだ躊躇があるようです。患者側で活動しているイ・インジェ弁護士は、代理人として2件の申請に関わったものの、いずれも不応諾で、手続きに入る前に終了となったそうです。現時点で弁護士業務への影響は限定的とのことでしたが、患者側・病院側の双方から、引き続き仲裁院をよい形で活用していきたいとの意向が感じられました。
韓国内の4つの被害者団体
最後にイ・インジェ弁護士より、韓国内の4つの被害者団体(医療事故家族連合会、医療消費者市民連帯、韓国患者団体連合会、医療事故被害者の会マルタ)の活動状況について説明がありました。韓国内でも、患者が被害回復のための自助グループを組織して、弁護士とも連携しながら政策提言を含む様々な活動に取り組んでいることを理解できました。日本の被害者団体の方々に、この貴重な情報を伝えていきたいと思いました。
国境を越えた活動の普遍性
今回の意見交換会を経て、国境を隔てているものの、同じ立場の患者や弁護士が、同じ志の下で活動していることを改めて知ることができ、とても勇気づけられました。今後も有益な交流を重ねていきたいと思います。最後となりましたが、堪能な日本語を駆使して連絡役を担当いただいた弁護士のパク・ジェホン氏に、心から御礼を申し上げます。ありがとうございました。