弁護士堀康司(常任理事)(2014年9月センターニュース318号情報センター日誌より)
調査手法研究班が発足
本年6月18日に改正医療法が成立し、来年10月から診療関連死の調査制度がスタートすることとなりました。これを受けて厚労省は、診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究班(研究代表者:西澤寛俊全日本病院協会会長)を設置し、ガイドライン策定作業を開始しています。
第1回会議は本年7月16日に開催され、本稿執筆現在までに計4回の会合が重ねられています。
会合は非公開
残念ながら会議は非公開です。弊センターが6月に公表した声明においても述べたとおり、市民や医療事故被害者の視点に立った制度とするためには、公開の場での議論が必要ですので、大変に残念です。
他方、厚労省は、厚労省ウェブサイトに各会合の概要(A4で2枚程度の分量のもの)を公表しています。概要は研究代表者名義で作成されており、各論点毎に委員等の発言骨子が匿名で列記された上で、簡潔なとりまとめが記されています。このように会議の状況が逐次報告されることは一定の評価に値するものではあります。ただ、すでに公表された第3回会議までの概要を見る限り、列記された意見には相対立するものも含まれているものの、いかなる議論を経た上でとりまとめに至ったのかを読み取ることができません。また、議論の前提とされた資料も添付されていません。情報開示のあり方には改善が求められます。
届出事例の例示のありかた
第2回会合では、届出基準と例示のあり方が議論されています。とりまとめとしては医療事故情報収集等事業の平成16年通知の分類及び診療関連死調査分析モデル事業の具体的事例に基づいて整理するとされています。抽象的基準のみでは届出事例がまちまちとなる恐れがありますので、具体例に基づく整理は非常に重要です。委員からは、届出実績を検索可能とする方法を併用してはという意見も出ており、様々な工夫によって、遺族にも、医療機関にもわかりやすい形で基準が設定されることが期待されます。
遺族からの相談の扱い
第2回会合では、遺族からの申出の扱いも議論されており、とりまとめとしては、何らかの形で医療機関にフィードバックし、管理者の判断に繋げる仕組みを設けるとされています。遺族の声に耳を傾けない制度では社会の信頼を得ることができませんので、この点については望ましい方向で議論が進められているようです。
支援団体の第三者性担保
第3回会合では、事故調査の支援団体のあり方について議論がなされています。とりまとめとしては、調査の具体的な技術支援と評価支援等を類別化しつつ、第三者性の担保についても一定の整理を行うとの方向性が確認されたようです。委員からは、都道府県の枠にこだわらない支援の必要性の指摘もあったようですが、医賠責保険を運用する医師会が支援団体となることの利益相反性についての議論は概要に記載されていません。支援団体の中立性確保は、適正な調査を実現する上で極めて重要なポイントですので、この点についても十分な議論が尽くされる必要があります。