どうなる?医療版事故調ガイドライン

弁護士松山健(嘱託)(2014年12月センターニュース321号情報センター日誌より)

西澤班とりまとめ

 改正医療法法案成立後の平成26年7月にスタートした「平成26年度 厚生労働科学研究費補助金 地域医療基盤開発推進研究事業 診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究班」(研究代表:西澤寛俊・全日本病院協会会長)は、平成26年7月16日の第1回会議以降、10月14日まで全8回開催され、10月23日付で、これまでの議論を整理して取りまとめた「議論の整理」を公表しました。

とりまとめの検討事項

 「議論の整理」では、検討事項を次のように整理します。
1)医療事故の報告・届出に関する事項
2)院内調査に関する事項
3)調査結果の報告書や遺族への説明のあり方に関する事項
4)センター業務に関する事項

1)医療事故の報告等に関する事項

 紙面の関係上、以下、1)に絞って「議論の整理」の内容を文意を変えずにほぼそのまま引用してご報告します。
①検討された課題
ⅰ)医療事故調査の標準化のための具体的な報告基準、例示等の考え方について
ⅱ)報告すべき医療事故の決定プロセスの標準化について
②これまでの議論の方向性
ⅰ)について~「医療事故」の範囲
 医療事故調査・支援センターへの報告義務が課される「医療事故(当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であつて、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定めるものをいう)」(改正医療法第6条の10第1項)の「提供した医療」については、「医療を伴わない管理」は医療事故調査の対象とせず、「医療の中の管理」は対象に含まれると考える。
 当該医療を行ってから死亡するまでの期間について、何らかの目安を示す必要があると考える。
 「死亡又は死産」の「死産」については、死亡と同様に、「医療に起因する」上での話であり、「死亡」と同じ考え方で良いと考える。
 「予期しないもの」の考え方については、多様な意見があったため今後さらに検討する。
ⅱ)報告すべき医療事故の決定プロセスの標準化
 今般の制度では、事案が発生した際、まずは各医療機関の管理者が組織として、その事案が報告すべき医療事故に該当するかどうかを判断することとなる。しかしながら、小規模医療機関(診療所、助産所等)では医療関係者の数や事案経験数も少なく、判断することが難しい場合もあると考えられるので、報告すべき医療事故の判断の過程において、支援団体の支援や、医療事故調査・支援センターへの相談が必要になる場合があると考えられるが、その際の支援団体やセンターの関与のあり方についてはさらなる検討を要する。
③その他の意見
 管理者は事案の詳細を知らないので、すべて「予期しない」とされる懸念があり、当事者が「予期しない」ことを考慮することも重要ではないか。
 今回の制度では、過失の有無を問わないこととされており、「明らかな過誤」の有無で届出を判断すべきではないのではないか。
④残された検討課題
○報告の対象となる「医療」の範囲
○「医療」を行ってから医療事故の発生、死亡までの期間の具体的考え方(○○日以内等、具体的な日数を検討する)
○「予期しないもの」の考え方
○医療事故の決定プロセスにおける、支援団体やセンターの関与のあり方

厚労省検討会がスタート

 この「議論の整理」公表の後、研究班と並行して、厚労省医政局が実施する検討会として、「医療事故調査制度の施行に係る検討会」がスタートし、既に11月14日に第1回会議が、11月26日に第2回会議が開催され、今後、月1~2回の開催を予定し、平成27年2月を目途にとりまとめを目指します。
 厚労省では、平成27年3月には、行政手続法に基づくパブリックコメントの実施を経て省令を公布し、平成27年4月以降に、省令・告示・通知事項についての指針の策定と公表を行うとともに、第三者機関の申請受付開始・第三者機関の大臣指定を行い、平成27年10月の法律の施行に臨む予定です。
 さて、第1回の検討会では、資料として、西澤班の「議論の整理」だけでなく、日本医療法人協会の「医療事故調ガイドライン」(法律文言の推移から報告対象から「過誤」類型・「管理」類型は 削除されたと主張)が提出されたことから、報告対象に医療過誤や管理が含まれるか否かといった間口の問題が中心的に議論されました。

まとめ

 法律上は骨組のみ枠づけて詳細を省令等に委ねる本制度は、ガイドライン次第で、実のある制度にもなれば、骨抜きにもされ得るものといえます。上記のような過密なペースで、今後、いまだ国民的な議論が活発化しないまま、ガイドラインが策定されていくことも考えられるだけに、本当に厳しく目を光らせて見守っていく必要があるといえます。