弁護士堀康司(常任理事) (2015年5月センターニュース326号情報センター日誌より)
安全調査機構の事業方針
本年4月22日、日本医療安全調査機構が平成27年度の第1回運営委員会を開催しました。
同委員会では、同機構の平成27年度事業方針及び事業計画が説明されました。
事業方針としては、本年10月から施行される医療事故調査制度において、同機構が「医療事故調査・支援センター」として業務を行うことを前提とし、これに向けた組織体制を整備するとともに、制度の周知を図り、人材育成研修や円滑な運営に向けた準備に取り組むことが明記されています。
本稿執筆時点で、同センターの公募は開始されていませんが、同機構がこれに応募し指定を受ける可能性が非常に高いものと考えられます。
機能する調査制度となることが大前提
今年度の同機構の事業計画では、「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」として昨年度までに受け付けた事例については評価作業を継続するとともに、今年度の4月から9月までの間に、新たに「支援型」の調査を10事例程度行う方針が明らかにされています(「従来型」・「協働型」の新規受付は終了となったようです)。
「支援型」調査では、同機構が主に院内調査を支援する方式が念頭に置かれています。具体的には、同機構が、①解剖、②外部委員の参加、③調査の具体的な方法について相談に応じるとともに、④同機構に常設される中央審査委員会が報告書案を医学的妥当等の観点から検討することが予定されています。
なお「支援型」調査の費用については、依頼する医療機関が、実費(解剖実施や外部委員への謝金)と同機構への調査申請費用(10万円。中央審査実費の一部)を負担することとなる見込みです。
人材育成事業も開始
同機構では、医療事故調査を担う人材育成にも取り組むとのことで、本年7月には「院内調査マネージメントコース」(全国7箇所)を、本年9月には「院内調査指導者養成コース」(トレーニングセミナー)をそれぞれ開催する計画が発表されています。本稿執筆時点で各コースの詳細に関する情報を確認できていませんが、新年度予算の中には、研修会諸経費が2日コース2回分と1日コース7回分が計上されています(企画会議費用も含む予算額は550万円)。
他に新年度予算には、新規事務所開設費・事故情報管理システム構築費・ウェブサイト開設費が含まれていますので、10月施行に向けて急ピッチで対応準備が進められることが予想されます。
より良い体制でのスタートを
少しずつ10月からの新制度の運用開始に向けた具体的準備の状況が明らかとなってきましたが、昨年来の議論の混乱の余波で、準備が遅れ気味であることは否めません。制度の適切な運営のためには、各医療機関において院内事故調査の核となりうる人材が不可欠ですが、現時点の予算を見る限り、十分な人材を継続的に養成し続けるだけの予算規模とは言いがたいように思われます。10月の医療事故調査制度施行をよりよい体制で迎えることができるよう、同機構のみならず、各医療機関の側でも、医療機関の長である管理者がリーダーシップを発揮し、積極的に準備を進めることが必要です。