医療安全へ向けた積極的取組みを!~特定機能病院の承認要件の見直し案、了承される

弁護士園田理(常任理事) (2016年3月センターニュース336号情報センター日誌より)

特定機能病院の承認要件の見直し案、了承される

 前月号の本欄でご紹介した特定機能病院の承認要件の見直しが、厚生労働省の検討会(特定機能病院及び地域医療支援病院の在り方に関する検討会)で、本年2月17日にとりまとめられ、翌18日開催の社会保障審議会医療部会で了承されました。
 今後、見直し内容を反映した新たな承認基準を定める省令の策定作業が進められ、新省令が本年4月に公布・施行される予定ですが、既に承認を得ている特定機能病院には、経過措置が設けられており、施行後半年を経過した本年10月より段階的に新承認基準が適用されていく予定です。

見直しの概要

 特定機能病院の承認要件の見直し内容は、
①ガバナンスの確保や医療安全管理体制に関する事項
②インフォームド・コンセントや診療録等に関する事項
③高難度新規医療技術の導入プロセスに関する事項
④職員研修の必須項目の追加や効果測定の実施
に関する事項にわたっています。
 ①については前月号の本欄でご紹介したところですが、改めて、今回の見直しで新たに設けられた承認基準として特徴的なものの概要を挙げますと、次のとおりです。
①・特定機能病院の管理者(病院長)に任命されるには医療安全業務の経験を必要とする
・医療安全管理責任者(副院長を想定)を配置する
・医療安全管理部門に専従の医師、薬剤師、看護師の配置を義務化する
・すべての入院患者死亡事例、通常経過では不要な処置・治療が必要になった一定以上の事例(行った医療に起因するか否か、予期していたか否かは問わない)の医療安全管理部門・管理者への報告を義務化する
・内部通報窓口の設置を義務化する
・開設者は、委員長と委員の過半数を外部者とする監査委員会を設置し、監査委員会は医療安全管理部門の業務状況を監査する
・特定機能病院の医療安全管理責任者等の職員が他の特定機能病院の医療安全管理状況を実地調査により確認して技術的助言を行い、相互にチェックし合う(ピアレビュー)
 ②~④の概要は、次のとおりです。
②・インフォームド・コンセントに関する責任者を配置し、同席者や標準的説明内容など必要な実施方法に関する規程を作成して、職員にインフォームド・コンセントを適切に取得させる
・診療録管理の責任者を定め、記載内容を確認させるなど診療録の適切な管理を行う
③・高難度新規医療技術による医療や、未承認の医薬品等による医療を行う場合に、実施の適否を確認する部門を設置する
・当該医療技術による医療や、未承認医薬品等による医療を行う場合に、遵守すべき事項等を定めた規程を作成する
・上記部門が規程の遵守状況を確認する
④・今回見直しがなされた医療安全に関する規定や監査委員会からの指摘事項、多職種が連携・協働して医療を提供するための知識・技能について、職員研修を実施する

医療安全へ向けた積極的取組みを!

  東京女子医科大学病院や群馬大学医学部附属病院で重大事故が相次いで発生したことを受けて、昨年特定機能病院に集中立入検査が実施されたところ、開設者・管理者が医療安全に積極的に取り組んでいない病院、内部監査を実施していない病院、インシデント・アクシデント報告の対象事故の基準不明確な病院、報告制度が機能しているか否かの確認不十分な病院、事故の要因分析、再発防止策の検討、同防止策実施の検証が不十分な病院などがあったとのことで、上記のような承認要件見直しに至りました。
 高度な医療を提供、開発し、研修を行うとして、全国で80余りしか承認されていない特定機能病院でさえ、医療安全管理体制等のガバナンスが不十分だと評価される状況でした。全国に8000を超えて存在する病院、10万を超えて存在する診療所での医療安全への取組みは果たしてどうなのでしょうか。
 今後、上記見直しをきっかけに、医療機関が医療安全に向けてより一層積極的な取組みを進めていくことを期待したいと思います。