医療事故調査・支援センター、運用改善への取り組み

松山 健(嘱託) (2016年10月センターニュース343号情報センター日誌より)

医政局総務課長通知に伴う医療事故調査・支援センターの対応

 8月の本稿で平成28年6月24日付医政局総務課長通知をご紹介しましたが、日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)は、この通知に伴い、センター業務として検討すへき事項を次のようにまとめ、3研修についての案、4遺族等からの相談に関する対応についての実施要領と書式を公表しています。

 平成28年6月24日医政局総務課長通知
1 支援団体等連絡協議会(中央協議会)に参画すること。(各支援団体等連絡協議会は、病院等の管理者か医療事故に該当するか否かの判断や医療事故調査等を行う場合に参考とすることかてきる標準的取扱いについて意見の交換を行うこと。)
2 医療事故調査制度の円滑な運用に資するため、支援団体や病院等に対し情報の提供及ひ支援を行うとともに、医療事故調査等に係る優良事例の共有を行うこと。なお、情報の提供及ひ優良事例の共有を行うに当たっては、報告された事例の匿名化を行うなと、事例か特定されないようにすることに十分留意すること。
3 改正省令による改正後の医療法施行規則第1条の 10の5第3項第1号に掲げる病院等の管理者が行う報告及び医療事故調査並びに支援団体が行う支援の円滑な実施のための研修を支援団体等連絡協議会と連携して実施すること。
4 遺族等からの相談に対する対応の改善を図るため、また、当該相談は病院等か行う院内調査等への重要な資料となることから、医療事故調査・支援センターに対して、遺族等から相談かあった場合、法第6条の13第1項に規定する医療安全支援センターを紹介するほか、遺族等からの求めに応して、相談の内容等を病院等の管理者に伝達すること。
5 医療事故調査報告書の分析等に基つく再発防止策の検討を充実させるため、病院等の管理者の同意を得て、必要に応して、医療事故調査報告書の内容に関する確認・照会等を行うこと。なお、医療事故調査・支援センターから医療事故調査報告書を提出した病院等の管理者に対して確認・照会か行われたとしても、当該病院等の管理者は医療事故調査報告書の再提出及ひ遺族への再報告の義務を負わないものとすること。

研修について

 「平成28年度『医療事故調査に係る知識及び技能に関する研修』について(案)」と題する書面では、医療事故調査制度を牽引する各地域の統括リーダーを養成し、その結果、標準的な考え方や調査方法が各地域で波及することを期待するとの方針を示し、次のA「支援団体統括者セミナー」、B「トップセミナー」、その他、都道府県支援団体協議会主導での医療機関向け研修を予定するとします。
A「支援団体統括者セミナー」
 「支援団体統括者セミナー」は、都道府県における医療事故調査を統括する指導者を養成するために、地域で、支援団体連絡協議会に関係し、医療事故調査支援及び、研修講師として活動予定の都道府県各3名、合計150名程度を対象に、平成28年11月と12月に東京で、2日間(1日目:概要、2日目:具体)実施予定とします。
B「トップセミナー」
 「トップセミナー」は、医療機関管理者が正しく「医療事故調査制度」を理解し、適正な制度運用を図るために、医療機関管理者またはこれに準ずる各100~200名程度を対象に、平成28年10月~12月に、全国7カ所(札幌、仙台、東京、愛知、大阪、岡山、福岡)で半日程度の時間の研修を実施予定とします。

遺族等からの相談に関する対応について

 医療事故相談専用タイヤル(03-3434-1110 医療機関からの相談と共通)への遺族等からの相談につき、遺族等からの依頼のある場合、センターは、遺族等からの聴取事項(相談日・相談者氏名(遺族等)・患者との続柄・患者名・患者死亡日・相談内容の概要)を書面に記載し、7日以内を目安として郵送により医療機関に伝達するとします。

 

まとめ

 報告書から院内調査委員会の設置を確認できた事例は49例中39例(79.6%)であり、委員会方式で調査が実施される例が大半を占めているようです。しかしながら、外部委員の参加を確認できた例は39例中26例で、外部参加人数は1人が最多(10例)である反面、委員総数が11人以上の事例が39例中11例を占めており、中には31人以上という事例も含まれています。事故発生から調査結果報告までの中央値は59日で、1ヶ月未満の事例が49例中12例を占めています。
 この数字からは、形としては委員会を開催しているものの、中立性・公正性が確保されないまま、不十分な議論に基づいて結論を出している医療機関が少なからず存在するのでは、と懸念されます。