松山健(嘱託) (2017年2月センターニュース347号情報センター日誌より)
第8次医療法改正案
病院長の権限の明確化や強化をはじめとする特定機能病院のガバナンス改革その他7項目を内容とする第8次医療法改正等の案が平成29年1月18日の社会保障審議会医療部会で了承されました。
厚生労働省は今通常国会に改正法案(医療法のほか、臨床検査法、保健師助産師看護師法)を提出し、早期成立を目指します。
改正の7つの柱
①特定機能病院のガバナンス改革に関する規定の創設(医療法)
②持分なし医療法人への移行計画の認定制度延長(医療法、相続税法(財務省))
③妊産婦の異常の対応などに関する説明の義務化(保健師助産師看護師法)
④医療機関開設者に対する監督規定の整備(医療法)
⑤検体検査の品質・精度管理に関する規定の創設(医療法、臨床検査技師等に関する法律)
⑥看護師などに対する行政処分に関する調査規定の創設(保健師助産師看護師法)
⑦医療機関のウェブサイトなどにおける虚偽・誇大などの表示規制の創設(医療法)
紙面の関係から、①と⑦のみご報告します。
①特定機能病院のガバナンス改革
平成28年2月、3月の本稿で特定機能病院の承認要件の見直しについてご報告しました。東京女子医科大学病院や群馬大学医学部附属病院の問題を受けての見直しで、平成28年6月には、医療法施行規則の一部を改正する省令が施行されています。
今回の改正案は、特定機能病院の大半を占める大学病院では、各診療部門の独立性が強く管理者である病院長がガバナンスを発揮して病院全体としての医療安全に向けての運営や改革を実施しにくい実情への対処として、次の3点を法的に位置付けます。
1)特定機能病院は、高度かつ先端的な医療を提供する使命を有しており、患者がそうした医療を安全に受けられるよう、より一層高度な医療安全管理体制の確保が必要であることを法的に位置付ける
2)特定機能病院の開設者に対し、管理者が管理運営業務を遂行するために必要な権限を明確化することを義務付ける
3)特定機能病院の開設者は、管理者が医療安全を確保できるよう、適切な管理者の選任、監査委員会の設置などの措置を講ずることを義務付ける
⑦医療機関のウェブサイト等における虚偽・誇大等の表示規制の創設
医療法上の「広告」(同法6条の5以下)の解釈に関しては、医療機関のホームページは、検索して閲覧するものであることから、(バナー広告とリンクする場合等を除き)原則として広告とは扱われないとの解釈が従来からとられてきました。このために、美容医療等で行き過ぎた広告が横行している現状があります。
今回の改正案は、ホームページ等ウェブサイト表示が広告可能事項の限定される医療法上の広告に該当するとなると、診療内容等の患者にとって参考となる情報が得られなくなる懸念から、ウェブサイトの表示は、従来通り医療法上の広告規制の適用対象とはしないとの解釈は維持しつつ、医療機関ホームページなどに虚偽内容などがある場合に、広告と同様の是正命令(医療法6条の8第2項)や罰則(六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金(同法73条第3項))を課せるようにするものです。
まとめ
今回の改正項目には、ご紹介したもののほかにも患者側代理人としての活動に関わりのある項目が多く含まれています。厚労省のウェブサイトの審議会・研究会等>社会保障審議会(医療部会) >社会保障審議会医療部会で資料等が閲覧できますので、ご参照いただければと思います。