医療法等の一部を改正する法律、成立

松山健(常任理事) (2017年7月センターニュース352号情報センター日誌より)

改正医療法公布

 2月の本稿で、第8次改正医療法案について、ご紹介しましたが、改正医療法が6月7日に成立、14日に公布されました。

 

改正の7つの柱

 2月の本稿でご案内したように、第8次改正の柱は次の7項目でした。
①特定機能病院のガバナンス改革に関する規定の創設(医療法)
②持分なし医療法人への移行計画の認定制度延長(医療法、相続税法(財務省))
③妊産婦の異常の対応などに関する説明の義務化(保健師助産師看護師法)
④医療機関開設者に対する監督規定の整備(医療法)
⑤検体検査の品質・精度管理に関する規定の創設(医療法、臨床検査技師等に関する法律)
⑥看護師などに対する行政処分に関する調査規定の創設(保健師助産師看護師法)
⑦医療機関のウェブサイトなどにおける虚偽・誇大などの表示規制の創設(医療法)
 今回の医療法の改正で、保健師助産師看護師法に関する⑥以外の改正項目が定められました。2月の本稿では、①と⑦に触れましたが、以下では、③と④についてご紹介します。

 

③妊産婦の異常の対応等に関する説明の義務化

【従来の課題】
 従来、分娩における急変時に助産所から医師・医療機関への連絡がなかったことにより、母児が死亡するケースが発生し、助産師会の調査により、妊婦に対して、妊娠中に起こりうる異常・合併症、医療機関との連携(転院、搬送の可能性)等の出産リスクに関する事前の説明文書の作成が十分に行われていない現状が明らかとなっていました。
【改正】
 改正により、出張のみによってその業務に従事する助産師は、妊婦又は産婦の助産を行うことを約するときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該妊婦等の異常に対応する病院又は診療所を定めなければならないものとされました(第19条第2項関係)。
 また、助産所の管理者(出張のみによってその業務に従事する助産師にあっては当該助産師)は、妊婦等の助産を行うことを約したときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該妊婦等の助産を担当する助産師により、当該妊婦等の助産及び保健指導に関する方針、当該妊婦等の異常に対応する病院又は診療所の名称、住所及び連絡先等を記載した書面の当該妊婦等又はその家族への交付及びその適切な説明が行われるようにしなければならないものとされました(第6条の4の2第1項関係)。

 

④医療機関開設者に対する監督規定の整備

【従来の課題】
 従来、病院等(病院、診療所又は助産所)の開設主体は医療法人に限らず多様であり、医療法人に対しては、医療法の規定により開設者への立入検査等を通じて法人の運営に対する監督を行うことができる反面、医療法人以外の病院等を開設する法人の運営に対しては、医療法による規制が及ばず、各法人の根拠法によって監督の内容が異なっていました。
 特に、一般社団法人・一般財団法人等については登記のみで設立が可能であり、かつ法人自体を監督する行政庁がないため、開設者に対する指導が十分できていないという課題がありました。
【改正】
(立ち入り検査)
 改正により、都道府県知事、保健所設置市長又は特別区長は、病院等の業務が法令若しくは法令に基づく処分に違反している疑いがあり、又はその運営が著しく適正を欠く疑いがあると認めるときは、医療法の施行に必要な限度において、当該職員に、当該病院等の開設者の事務所その他当該病院等の運営に関係のある場所に立ち入り帳簿書類その他の物件を検査させることができるものとされました(第25条第2項関係)。
(改善命令)
 都道府県知事等は、病院等の業務が法令若しくは法令に基づく処分に違反し、又はその運営が著しく適正を欠くと認めるときは医療法の施行に必要な限度において、当該病院等の開設者に対し、期限を定めて、必要な措置をとるべきことを命ずることができるものとされました(第24条の2第1項関係)。
(業務停止命令)
 病院等の開設者が第24条の2第1項による命令に従わないときは、都道府県知事等は、当該開設者に対し、期間を定めて、その開設する病院等の業務の全部又は一部の停止を命ずることができるものとされました(第24条の2第2項関係)。

 

まとめ

 医療法等の一部を改正する法律は、参議院のウェブサイトの「議案情報」で成立法文をPDFファイルで確認できます。また、6月14日に発出された厚労省医政局長通知(「医政発0614第6号」でネット検索すればヒットします)が改正の趣旨と主な内容について簡潔にまとめていますので、ご覧いただければと思います。