柄沢好宣(嘱託) (2018年4月センターニュース361号情報センター日誌より)
平成29年年報刊行
本年3月15日、日本医療安全調査機構から、『医療事故調査・支援センター平成29年(2017)年報〈事業報告〉』が刊行されました。
昨年の数値との比較から
医療事故調査制度が平成27年10月に施行されて以降、機構において制度の運用状況に関する数値がとられています。もっとも、平成27年は10月から12月の3か月分の数値しかありませんので、今回の年報で、初めて年単位での比較ができるようになりました。
主立った項目について、平成28年と平成29年の数値を比較すると、次のようになります。
|
平成29年 |
平成28年 |
医療事故発生報告件数 |
370件 |
406件 |
死亡から医療事故発生報告までの期間 |
57.2日※1 |
36.2日※1 |
院内調査結果報告件数 |
321件 |
219件 |
医療事故発生報告から院内調査結果報告までの期間 |
222.1日※1 |
145.2日※1 |
解剖※2の実施件数 |
133件 (41.4%) |
74件 (33.7%) |
Aiの実施件数 |
115件 (35.8%) |
85件 (38.8%) |
外部委員の参加状況 |
278件 (86.6%) |
171件 (78.4%) |
再発防止策の記載状況 |
297件 (92.5%) |
191件 (87.2%) |
※1 平均値
※2 病理解剖・司法解剖・行政解剖を含む
こうした比較をみると、解剖やAiの実施件数や外部委員の参加状況といった、調査方法に関する数値が上昇していることは評価できるように思われます。
もっとも、解剖やAiの実施割合を見ると、必ずしも十分に実施されているとは言い難い状況であるように思います。いずれも、人的・物的体制が整わないと実施が難しいものではありますが、医療事故調査等支援団体の支援の在り方等も踏まえながら、解剖やAiの実施が十分に行われていない原因分析と対策の検討が臨まれます。
また、この数値をみると、死亡から医療事故発生報告までに、平均で2か月ほどかかっているという実情が目につきます。
平成28年11月号の本稿でも言及しましたが、医療事故が疑われる死亡事例が発生した場合、可及的速やかに病理解剖が実施されることが望まれます。亡くなられてから時間が経つほど、ご遺体に死後変化が生じたり、荼毘に付されたりしてしまうからです。ご遺族としては解剖を受入れがたいということもあるでしょうが、少なくとも、ご遺族が解剖を実施するか否か判断できるような説明が、適時になされる必要があります。
医療機関においては、当該事例が報告を要する「医療事故」に該当するかの判断に苦慮しているという話はしばしば耳にします。報告までに長期間かかっていること自体はやむを得ない側面はあろうかと思いますが、その場合でも、死亡後、適時に解剖が実施されている必要があると思われます。
さいごに
同年報は、同機構のホームページから冊子のものを入手することもできますが、pdfファイルでの閲覧も可能になっています。
(URL)
https://www.medsafe.or.jp/uploads/uploads/files/nenpou-h29.pdf