松山健(常任理事) (2018年11月センターニュース368号情報センター日誌より)
Q&A
医療広告規制に関しては、本稿でも度々(2017年2月号、7月号、2018年3月号、6月号)ご紹介し、改正医療法の施行と医療広告ガイドラインの通知についてお伝えしたところです。
2018年8月10日付で厚労省医政局総務課の事務連絡として「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)に関するQ&Aについて」が公表されているのでご紹介します。
広告の定義
まず、医療広告ガイドラインの広告の定義を引用します。
○医療広告ガイドライン
1 広告の定義
法第2章第2節「医業、歯科医業又は助産師の業務等の広告」の規定による規制の対象となる医療に関する広告の該当性については、次の1及び2のいずれの要件も満たす場合に、広告に該当するものと判断されたい。
1 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
2 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
なお、1でいう「誘引性」は、広告に該当するか否かを判断する情報物の客体の利益を期待して誘引しているか否かにより判断することとし、例えば新聞記事は、特定の病院等を推薦している内容であったとしても、1でいう「誘引性」の要件を満たさないものとして取り扱うこと。ただし、当該病院等が自らのウェブサイト等に掲載する治療等の内容又は効果に関する体験談については広告に該当すること(その上で省令第1条の9第1号の規定に基づき禁止されること)。
また、2でいう「特定性」については、複数の提供者又は医療機関を対象としている場合も該当するものであること。
Q&Aは、医療広告ガイドラインの具体的な解釈について79項目を整理したものです。
Q&A例
Q&Aの一部を抜粋します。
Q2-9 医療機関のウェブサイト上の口コミ情報は、広告規制の対象でしょうか。(P.9)
A2-9 患者等の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談は、今回新たに規定された広告禁止事項です。特に、当該医療機関にとって便益を与えるような感想等を取捨選択し掲載するなどして強調することは、虚偽・誇大に当たるため、広告できません。(関連:Q2-10、Q2-11)
Q2-10 医療機関の口コミ情報ランキングサイトについては、広告規制の対象でしょうか。(P.9)
A2-10 ランキングサイトを装って、医療機関の口コミ(体験談)等に基づき、医療機関にランキングを付すなど、特定の医療機関を強調している場合は、比較優良広告に該当する可能性があり、広告できません。(関連:Q2-9、Q2-11)
現在検討中のQ&A案
第11回、医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会が9月12日に開催されました。検討会では、
Q 医療機関の検索が可能なウェブサイトに掲載された、治療等の内容又は効果に関する体験談は広告規制の対象でしょうか。
A 一般に、医療機関の検索が可能なウェブサイトのトップページには、特定性・誘引性がないと考えられるため、広告には該当しません。他方、検索後等に表示される検索結果のページは、特定性・誘引性がある場合には、広告に該当します。
(略)当該ウェブサイトに治療等の内容又は効果に関する体験談を掲載することはできません。
というQ&A案に関して、①医療機関の検索が可能なウェブサイトにおける広告の定義に該当する誘因性の考え方、②医療機関側に誘因意図がある場合に規制対象となる体験談について、議論がなされています。
検討会の議事録を読むと、医療機関自体が運営するウェブサイトだけでなく、個人のSNSや口コミサイト等を医療機関が広告に利用する形態を規制すべき要請と、その判別を費用負担の発生という対価性を基準にしたところで、現実的に無数に存在するウェブサイトについて確認しうるのか、といった線引きの難しさが感じられます。今後の議論を見守りたいところです。