柄沢好宣(嘱託) (2019年4月センターニュース373号情報センター日誌より)
2018年年報の刊行
本年3月20日に、日本医療安全調査機構より、「医療事故調査・支援センター 2018年 年報」が刊行されました。
同年報は、日本医療安全調査機構のホームページからも閲覧することができます。
【URL】https://www.medsafe.or.jp/uploads/uploads/files/nenpou-h30-all.pdf
今回の年報では、2018年にはじめて実施された医療機関、遺族の方々を対象としたアンケート調査の結果も掲載されています。このアンケートは、制度開始後初めて実施されるものとのことです。
私自身もいろいろと考えさせられるところがありましたのでご紹介します。
遺族の目から見た説明のあり方
遺族の方に対する、院内調査の結果について理解(医学的な説明等)できたかという質問に対しては、全23件の回答中、「理解できた」が4件、「概ね理解できた」が10件、「あまり理解できなかった」が8件、「全く理解できなかった」が1件という結果でした。理解できなかったとする理由としては、内容や用語の専門性を挙げるものが目に留まりましたが、「概ね理解できた」とする回答の中でも、「内容が多かったが1時間の説明だったためペースが早くじっくり考える時間が無かった」とするものもありました。
こうした回答を見ると、やはり、調査結果の説明にあたっては、報告書が遺族に交付されること、しかもそれが説明よりも前に実現していることが必須であると痛感せざるを得ませんでした。
一方で、疑問点について時間をかけて教えてもらった、説明の場で回答が得られなかった点については後日回答があった、専門用語の説明もあり理解しやすいように工夫されていたというものもあり、こうした例はモデルケース的に情報共有されることが必要であろうとも感じました。
情報の共有を
医療機関側からは、院内調査を実施したことで明らかになった改善点として、「診療記録の記載・保管・運用」が63.8%、「インフォームド・コンセントの在り方」が57.5%、「各種マニュアルの検討」が53.8%、職員・患者間のコミュニケーションの在り方」が52.5%、「ルールや安全情報の周知」が51.3%、「職員に対する安全教育、研修」が51.3%と、多くの項目で回答のあった医療機関の過半数が改善の余地ありとしています。それぞれ、個別の事情はあるものと思いますが、こうした結果からすると、各医療機関の間でも課題の大枠は共通しているものと理解され、課題や改善策を相互に情報共有できることが、各医療機関の安全体制の向上に結び付くのだろうと思います。
このアンケート調査の結果をより掘り下げるなどして、具体的な課題や改善点を医療界全体で共有されることを期待してやみません。
総会記念シンポジウムのお知らせ
医療事故情報センターでも、医療事故調査制度運用開始から3年を経たことを受け、総会記念シンポジウム「医療事故調査制度はどうあるべきか
-制度施行後3年の実情から考える-」を開催いたします(日時:2019年5月25日(土)午後1時~午後4時30分 場所:ウインクあいち10階1001会議室)。
事前申し込みは不要ですし、入場も無料ですので、ぜひ、足をお運びください。