特定機能病院の承認要件見直し

松山健(常任理事) (2019年7月センターニュース376号情報センター日誌より)

第三者評価の位置づけが焦点に

 厚労省「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」は6月6日の第17回の会合がありました。以前に、2016年2月と3月の本稿でご紹介したように、検討会では、東京女子医科大学病院や群馬大学医学部附属病院の問題を受けて、特定機能病院の承認要件の見直し等を検討しています。
 現在まで、医療法施行規則の改正(2016年)により、医療安全管理に関して要件が見直され、また、医療法の改正(2017年)と、医療法施行規則の改正(2018年)により、ガバナンスに関して要件が見直されました。
 2017年の「医療法等の一部を改正する法律」に関する国会の議論において、特定機能病院の第三者評価の重要性が指摘され、参議院では「五、特定機能病院におけるガバナンス体制の強化及び安全で適切な医療の提供を定常化し、高度の医療安全の確保を図るために、特定機能病院の承認後の更新制の是非について検討するとともに、広域を対象とした第三者による病院の機能評価を承認要件とすること。」との付帯決議を行っています。
 現在、検討会は、「第三者による病院の機能評価を承認要件とすること」につき、第三者評価を「受審すること」を特定機能病院の承認要件とするか、第三者評価の「認定」を承認要件とするかについて、「受審」を要件とする内容の厚労省案をたたき台に検討しています。

第三者評価を「受審すること」を要件とするか、第三者評価において「認定されること」を要件とするか

 厚労省は、第三者評価の「受審」を指定要件とした場合と「認定」を指定要件とした場合についての影響と必要な制度的対応を次のように整理します。

 

 

「受審すること」を要件とした場合

「認定されること」を要件とした場合

第三者による認定の効力

第三者評価の認定の有無が、特定機能病院の承認の可否に影響しない。

第三者評価の認定の有無が、特定機能病院の承認の可否に影響する。

考えられる追加的な制度的対応

第三者評価の過程で指摘された事項について対応することを、特定機能病院の努力義務とするか検討が必要。

認定の適切性を担保するため、要件を定めた上で、国が第三者評価の実施機関を決定し、監督が必要。

第三者評価の実施機関

特定機能病院の医療安全管理体制等を評価できる機関の中から、病院が主体的に選択できる。(第三者評価の実施機関は限定されない)

認定された第三者評価の実施機関に限定される。

 

 

 厚労省案のように、「受審」を要件とした場合、仮に第三者機関が「認定しない」と評価したとしても、指定要件は「受審」で充足しているので、特定機能病院の指定には影響しないことになり、第三者機関が不適切で改善が必要と指摘した事項について、改善への反映が担保されず、厳格に「認定」を承認要件として基準を満たさない場合に指定をしないほうが実効的なようにも思えます。
 他方で、そもそも制度改革の発端となったような事件を防ぐ上では承認後の質的担保、要件充足の維持に本質的課題があり、今回の制度改革が、ガバナンス体制の強化を図り、特定機能病院が主体的に質の確保に取り組むという枠組で進められていることを背景に考えると、厚労省案のように、病院が自らの改善点についてフィードバックを受ける仕組みとして第三者評価を位置づけ、「受審」を要件とすることが整合的ともいえます。

 

第三者評価の実施機関についても検討課題あり

 このような第三者評価を実施する機関としては、現在、従来より特定機能病院の評価を行ってきた公益財団法人 日本医療機能評価機構(本部日本)、Joint Commission International(本部米国)、一般財団法人日本品質保証機構等(ISO本部スイス)があり、日本医療機能評価機構では、特定機能病院に特化した受審プログラム(一般病院3)を新設し、「一般病院3」は2018年4月から運用され、現在、19の特定機能病院が受審し、すでに7病院(静岡県立静岡がんセンター、名古屋市立大学病院、大阪国際がんセンター、長崎大学病院、獨協医科大学病院、和歌山県立医科大学附属病院、九州大学病院)が認定を受けています。
 厚労省案では、第三者評価機関は限定されず病院が主体的に選択できるとしますが、検討会では、審査の厳しい機関より緩い機関に、更新審査の期間が長い機関に流れてしまう危険との意見も出されており、検討すべき課題は少なくありません。検討会は、6月26日に第18回を開催し、2019年夏の意見の取りまとめを目指しており、今後の議論を見守りたいところです。