柄沢好宣(嘱託) (2019年12月センターニュース381号情報センター日誌より)
厚労省での検討始まる
2019年8月号で、医師の業務を多職種に移管するタスク・シフティングについて、厚生労働省によるヒアリングが進められていることをご紹介しました。
その後、厚生労働省医政局内に「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」が設置され、これまで3回にわたって議論が進められております。
10月23日に第1回検討会が開催され、検討の方向性について議論がなされました。これを受けて、第2回検討会では、臨床現場で行われる業務を、「現行制度の下で実施可能な業務」「現行制度では明確に示されていない業務」「現行制度では実施できない業務」に分類し、前2者については内容を整理した上で、通知等によりタスク・シフト/シェアを推進し、3点目は一定の要件を充足する場合に、法改正等によってタスク・シフト/シェアを推進するという検討の視点が提示されました。
この3点目の要件としては、次の3つが挙げられています。
①原則として各資格法の資格の定義とそれに付随する行為の範囲内であること。
②その職種が担っていた従来の業務の技術的基盤の上にある隣接業務であること。
③教育カリキュラムや卒後研修などによって安全性を担保できること。
医療安全の観点から
第1回の検討会の中では、医師とタスク・シフトを受ける職種との信頼関係が、医療安全を十分確保する上での前提であると指摘されています。
このタスク・シフト/シェアを考える上では、医療安全の観点は不可欠です。タスク・シフトを受ける側との連携がうまくいかないことでエラーが起こることも懸念されるため、こうした点について十分な検討がなされる必要があります。
救急救命士を例に
第2回検討会では、上記の検討の視点に基づいて議論がなされています。その中で、救命救急士へのタスク・シフト/シェアについて話題が及んでおり、救急の現場での人手不足から救命救急士へのタスク・シフト/シェアの必要性が指摘されています。
他の職種と違って、救命救急士は当該医療機関に所属する職種ではありません。上記の観点で言えば、信頼関係を形成する機会が他の職種と比較して少ないように思われます。また、指揮系統を明確にしておかなければ、思わぬところで躓きが出ることも懸念されます。
タスク・シフト/シェアを受ける側の教育を徹底することも重要ですが、その前提として、それを実行に移したときに臨床業務が円滑に進むための手段を構築しておくことも必要不可欠であると思われます。
現時点では議事録が公開されていないため、第3回検討会の検討内容についてはまだわかりませんが、医療安全が十分に確保される方向での検討が望まれるところです。
なお、検討会の状況については、こちらからご確認いただけます。
【厚生労働省ホームページ】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07275.html