柄沢好宣(嘱託) (2020年8月センターニュース389号情報センター日誌より)
医療安全文化調査 活用支援プログラム
本年7月8日付で、日本医療機能評価機構から「医療安全文化調査活用支援 活用事例集vol.3」が発行されたと発表されました。
日本医療機能評価機構では、現在、「医療安全文化調査 活用支援プログラム」を行っています。同プログラムは、機構の病院機能評価事業のうち、「組織への支援」の新たなメニューとして、昨年度の試行期間を経て、本年4月に開始されました(参加申込みは2月より開始)。予定では、7月~10月にベンチマーク期間が設定されており、11月にその結果が公開されることになっています。
同プログラムは、医療安全文化を定量的に測定することで、参加病院の医療安全の推進・質の改善への取り組みを支援することが目的とされており、具体的には、機構から参加病院に対して、①調査システムの提供、②ベンチマークデータの提供、③活動共有の場の提供、④活用事例の共有を行うことになっています。
参加病院では、事務職を含む所属職員に対して、「職場・部署」「上司」「コミュニケーション」「出来事報告の頻度」「医療安全の達成状況」「病院」「出来事報告の数」「背景情報」「ご意見(自由記載)」の項目に分類された54の設問について回答を求めることで調査を行います。この調査には、米国AHRQ(Agency for Healthcare Research and
Quality:米国医療研究・品質庁)が開発した「医療安全文化調査票(HSOPS:Hospital Survey on Patient Safety Culture)」が用いられているそうです。
活用事例の紹介
今回紹介された活用事例は、福岡赤十字病院の事例で、川崎市立多摩病院の事例に続いて2例目です(活用事例集としてはvol.3とされていますが、vol.1は本調査の意義等に関する総説的な解説となっているようですので、個々の病院における事例紹介としては、2例目というカウントになると思われます)。
紙幅の都合上、個々の事例に関するご紹介は割愛しますが(それぞれの内容については、こちらからご覧ください:https://www.jq-hyouka.jcqhc.or.jp/support/psc/case/)いずれの事例も、調査結果が可視化されることで、自院における医療安全の取り組みの成果・課題・方針が明確になったと評価されており、今後も継続したデータ収集が医療安全文化の醸成に寄与するとされています。
継続と積み重ね
医療安全が文化として根付くには、まだ様々な課題を乗り越えていく必要があるように思います。そのためには、ひとつひとつの取組みを継続し、定着させていくことが肝要ではないでしょうか。
本号のドクターインタビューとして掲載されております長島久先生のインタビューの中でも、成功体験の積み重ねが重要であるとのご指摘がされています。今回のような取組みの積み重ねが、それぞれの医療機関における成功体験として積み重なるとともに、医療機関相互での経験の共有としても積み重ねられ、医療の現場全体にフィードバックされることが大いに期待されるところです。
なお、「医療安全文化調査 活用支援プログラム」の詳細については、日本医療機能評価機構のホームページ(https://www.jq-hyouka.jcqhc.or.jp/post/outline/info/4017)でご確認いただけます。