医療情報等の共有に向けての環境整備(第6回健康・医療・介護情報利活用検討会)

松山 健(常任理事) (2021年3月センターニュース396号情報センター日誌より)

電子カルテ標準化の検討

 2019年11月、2020年7月、同年11月の本稿では、医療情報等の共有に向けての環境整備に関して厚労省の設置する各検討会の議論をご報告してきました。

 今回は、2020年12月9日に開催された検討会(第6回健康・医療・介護情報利活用検討会、第5回医療等情報利活用WG及び第3回健診等情報利活用WG合同開催)での電子カルテ情報等の標準化に関する検討状況についてご報告します。

電子カルテの「標準化」は今後どのように進む?

 

  ①まず、データ交換を行うための規格を定めた上で、②交換する標準的なデータの項目、具体的な電子的仕様を定め、③民間団体における審議も踏まえて厚労省の標準規格化を行っていき、④ベンダーにおいて標準化された電子カルテ情報あるいは交換方式を備えた製品の開発を行い、最終的に、⑤医療情報化支援基金等により、この標準化された電子カルテ情報及び交換方式の普及を目指していくということです。

標準化のための規格

 標準化というと、電子カルテの仕様を統一してソフトウェアの規格を一本化することをイメージしがちですが、厚労省は、当初から、統一化したソフトウェア、画一化された製品は現実的ではないとして、標準化の対象は、システム全体ではなく、医療施設間で情報共有や連携の促進のためのデータ交換であるとの見解を示していました。

 従前は、現状の医療機関ごとに異なるベンダーの電子カルテソフトウェア利用を維持しつつ、相互に情報交換できるコンバータ(変換)システムを導入することでデータ連携を図る方法も検討されていましたが、コンバータ方式ではなく、データ交換のための標準規格を定めて電子カルテ情報自体を標準化する方針となり、この標準規格として、アプリケーション連携が非常に容易で、データアクセス先(サーバ)の仕様をWEBブラウザ等により確認でき、クライアント側で用途別にAPI(Application Programming Interface ソフトウェアコンポーネントが互いにやりとりするのに使用するインタフェースの仕様のこと)の個別実装が不要なHL7FHIR(HL7 Internationalによって作成された医療情報交換の次世代標準フレームワーク)の規格を用いて進めていく方針です。

 

標準化を進める電子カルテの文書情報や文書以外のデータの項目

 ①診療情報提供書、②キー画像等を含む退院時サマリー、③電子処方箋、④健診結果の報告書について、電子カルテの標準化を進め、文書以外のデータについては、傷病名、アレルギー情報、感染症情報、薬剤禁忌情報、救急時に有用な検査情報、生活習慣病関連の検査情報の標準化を進め、それ以外の医療情報については、学会あるいは関係団体等において標準的な項目を取りまとめた上で、HL7FHIRの規格を遵守した規格仕様書案が取りまとめられた場合には、それを厚労省標準規格として採用可能かどうか検討し、カルテへの実装を進めていくとされています。

まとめ

 IT技術の進化はスピードが速く、最新とされる技術もすぐに陳腐化することに照らせば、電子カルテシステムをソフトウェア面で統一規格化するのは、実現可能性の面でも、将来的な発展・修正可能性の面でも現実的ではないのは確かでしょう。

 その意味で、諸外国でも活用の見られる規格を用いてのデータ連携仕様の方向性は、今後の標準的な医療情報システムの在り方として評価できるでしょう。

 なお、厚労省は、平成18年から「厚生労働省電子的診療情報交換推進事業」(SS-MIX:Standardized Structured Medical Information eXchange)を開始しSS-MIX2という標準化ストレージでのデータ格納方式を推進してきました。

 HL7FHIRでは、データ格納方式は規定しておらず、SS-MIX2との組み合わせも可能であるので、この点も今後の検討課題となりそうです。