医療事故調査制度2020年の実施状況

柄沢 好宣(嘱託) (2021年4月センターニュース397号情報センター日誌より)

年報公表される

 日本医療安全調査機構より、「医療事故調査・支援センター 2020年 年報」が公表されました。

 2020年1月1日~同年12月31日までの運用状況が報告されています。年報の内容は、過去のものも含めて、Web上でもご覧頂けるようになっています。

https://www.medsafe.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=2#nenpou

 

医療事故発生報告実績

  少し遡りますが、2018年年報から、病床規模別の医療事故発生報告回数(実績)の相関関係がデータとして報告されるようになっています。

 ここに示されているデータのうち、最も病床数が多いカテゴリーである「900床以上」の報告実績を例にとって見てみますと、1回以上、医療事故の報告実績のある医療機関は、全53施設(2020年は52施設)中、2018年で38施設、2019年でも38施設、2020年では42施設という状況になっています。

 病床数が多くなればなるほど、医療事故の発生頻度は高くなるように思われますし、むしろやむを得ないものとも思われます。むろん、各医療機関の機能等に左右されるところもあるのでしょうが、それでも900床以上の規模の医療機関をもってしてもなお、10施設はまだ1度も医療事故としての報告がされたことがないというのは驚きですし、医療事故情報が適切に院内で処理されているのだろうかと疑問を感じざるを得ません。

医療機関の間で生じている乖離

 2019年に比べて、2020年には4施設が初めて報告の実績を作ったことにはなりますが、他方で、52施設中32施設は既に複数回の報告実績があり、中には10回以上報告している医療機関も3施設あります。

 こうした数値を見ると、医療事故調査制度に基づいて院内事故調査を実施している医療機関とそうでない医療機関とのギャップが既に顕著となっているように思われます。こうしたギャップが少しでも小さくなるようにしていくことも、今後の運用を考える上での課題ではないでしょうか。

気になる機能別の報告実績

 年報には、「基幹型臨床研修病院における報告件数」と「特定機能病院における報告件数」といったデータも掲載されています。これは、年間の報告件数を集計したものであって、上記のようなこれまでの報告回数(実績)との関係でのデータはありません。

 単に病床数との関係だけではなく、医療機関の機能と報告回数の関係についても大変気になるところです。来年以降、こうした観点でのデータも公開されるとよいのではないでしょうか。

運用5年を経て

 医療事故調査制度は、運用が始まって既に5年が経ちました。医療事故情報センターでは、本年5月29日(土)に、医療事故調査制度をテーマとしたシンポジウムの開催を企画しています。

 オンラインでご参加いただけますので、是非ご参加ください。

(お申し込み方法は、医療事故情報センターのホームページをご確認ください)