柄沢好宣(嘱託)(2022年6月センターニュース411号情報センター日誌より)
日弁連の6つの提言
日本弁護士連合会が、2022年5月10日付けで「医療事故調査制度の改善を求める意見書」を取りまとめ、同月13日に厚生労働大臣及び法務大臣宛にこれを提出しました。意見書の全文は、日弁連ホームページでダウンロードいただけます(https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/opinion/2022/220510_2.pdf)。
意見書では、医療事故調査制度がより医療の安全に資する制度となることを目的として、次の6項目が提言されています。
1 医療事故調査制度を十分に周知して、国民や医療者の同制度についての理解を深めること。
2 医療機関あるいは遺族から相談を受けた医療事故調査・支援センターが、調査が必要であると判断した場合には、当該医療機関に調査の実施を促すことができ、当該医療機関が一定期間内になお調査を開始しないときは、同センターが調査を実施できる制度を創設すること。
3 遺族及び医療事故調査を実施する医療機関に対して、速やかに司法解剖の結果報告書を開示すべきことを通達などで定めて明確にすること。
4 医療事故調査・支援センターが実施した調査の結果報告書を公表する制度を創設すること。
5 医療事故調査を実施する医療機関を財政的に支援する制度を創設すること。
6 医療事故調査制度の対象となった事故を対象とする無過失補償制度を創設すること。
医療事故の適切なフィードバックのために
本年4月号の本稿では、「医療事故調査・支援センター2021年年報」での報告内容から、地域や医療機関の間で未だに報告実績に格差が残されている実情をご紹介しました。正会員の皆様にも、本来事故調査が行われるべきと思われる事案であっても、医療機関側の判断によって調査が行われなかったというご経験を少なからずお持ちであろうと思います。
調査されるべき事案を埋もれさせないということは、起きてしまった不幸な事故を今後の医療に還元することすらできないという、より不幸な事態を招いてしまいます。そうしたことがないよう、必要に応じて医療事故調査・支援センターが直接調査を実施できる制度となることは、非常に意義深いものと思われます。
また、医療事故調査の結果を医療現場に還元するための手段のひとつとして、センターの行った調査報告書が何らかの形で公表されることも重要であり、この点は昨年の医療事故情報センター総会記念シンポジウムにおいても議論が及んだところでもあります。
今期待されている制度とは
提言の6つ目では、無過失補償制度にも言及されています。折良く、本年の医療事故情報センター総会記念シンポジウムでは、「医療における無過失補償制度を展望する」と題し、無過失補償制度の必要性等について改めて目を向ける機会としました。
医療事故調査制度の運用が開始され、今年で7年となります。原因分析・再発防止と被害救済という“両輪”がうまく機能するような制度設計が、今改めて期待されているのではないでしょうか。