松山健(常任理事)(2022年7月センターニュース412号情報センター日誌より)
第9回検討会
2022年5月17日に第9回の検討会が開催されました。
2021年3月の本稿で2020年12月9日に開催された第6回の健康・医療・介護情報利活用検討会の議論状況を報告してから、3回の会合が開かれています。
ワーキンググループ設置
この間、2021年11月10日に検討会を親会として、医療機関の間での電子カルテ情報を相互に閲覧できる仕組みを検討するために「医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」(以下「WG」)が設置され、2022年5月16日には第4回の会合が開かれました。
現時点で定まっていること
現時点では、「電子カルテ情報交換サービス」(仮称)として、HL7 FHIRを厚生労働省標準規格として採用し、以下の表の医療情報とそれを踏まえた文書の電子的仕様が定められ(令和4年3月、厚生労働省標準規格化)、今後、この規格に準拠した電子カルテの普及を促進するとともに、医療現場での有用性を考慮しながら、それ以外の電子カルテ情報の標準化も段階的に拡張することとなっています。
現在までの議論で「共有・交換する情報」として電子的な仕様が定まったのが、次の情報と文書です。
【医療情報】
①傷病名
②アレルギー情報
③感染症情報
④薬剤禁忌情報
⑤救急時に有用な検査情報
⑥生活習慣病関連の検査情報
⑦処方情報
【上記を踏まえた文書情報】
①診療情報提供書
②キー画像等を含む退院時サマリー
③健康診断結果報告書
まだまだ課題が山積
他方、「電子カルテ情報交換サービス」の運営主体はいまだ決定していません。
また、電子カルテは、一部の大規模病院では高い確率で導入されていますが、令和2年の厚労省の医療施設調査での普及率は、一般病院57.2%、一般診療所49.9%と依然として低いままであり、共有の対象となる電子カルテ自体の普及を図ることが第一の課題です。
そして、既存の厚労省が推進してきたSS-MIX、SS-MIX2という標準化ストレージでのデータ格納方式ID-Link(NEC)やHumanBridge(富士通)等の地域医療連携ネットワークとの連携をどうとっていくか、また、2023年4月から医療機関や薬局に導入を原則義務化するオンライン資格確認システムとの連携、融合、情報漏洩防止のセキュリティ確保の問題等々、課題はまだまだ山積しています。
まとめ
道のりは険しいですが、異なるベンダーごとの電子カルテの利用を維持しつつAPIを介してデータ変換し、標準規格HL7 FHIRに基づいてデータ交換する形であるので、電子カルテの仕様を統一してソフトウェアの規格を一本化する方針に比べれば、実現可能性は高いといえるでしょう。
このテーマに関する以下の以前の本稿の記事もご覧ください。
2021年3月 https://www.mmic-japan.net/2021/03/01/diary/