画像・病理診断報告書の確認漏れ防止に向けて ~2022年度診療報酬改訂

柄沢好宣(嘱託)(2022年8月センターニュース413号情報センター日誌より)

報告書管理体制加算の新設

 本年度の診療報酬改定により、「報告書管理体制加算」の項目が新設されました。これにより、医療機関の画像診断部門や病理診断部門が医療安全管理部門と連携し、画像診断報告書や病理診断報告書の確認漏れなどの対策を講じ、診断または治療開始の遅延を防止するための体制を整備している場合の評価として新設されたものであり、画像診断または病理診断が行われた入院患者について、退院時1回に限り、7点を加算できるようになりました。

 近年、画像検査報告書の記載内容を見落とす医療事故が相次いで報告されている状況を受けての新設であり、医療関係者からは「ミスや過誤を防ぐ対応に加算が認められるのは異例で画期的」との声が出ているとも報道されています。

組織的な事故防止への取り組み

 報告書管理体制加算が認められるための施設基準としては、

・放射線科または病理診断科を標榜する保険医療機関であること

・医療安全対策に係る研修を受けた専任の臨床検査技師や診療放射線技師等が報告書確認管理者として配置されていること

・当該保険医療機関において、報告書確認対策チームが設置されていること

・報告書の確認対策を目的とした院内研修を、少なくとも年1回程度実施していること

・報告書確認の実施状況の評価に係るカンファレンスが月1回程度開催されていること

などが定められています。

 これを見ますと、報告書の確認を個々のスタッフにのみ委ねるのではなく、報告書確認管理者を中心とした報告書確認対策チームを配置した上で、報告書確認の実施状況の評価に関するカンファレンスも定期的に実施することで、二重三重のチェックが可能になるよう、事故防止に向けた組織的な取り組みを促しているように理解されます。 

今後の拡充にも期待

 もっとも、今回対象とされているのは、画像診断または病理診断が行われた入院患者のみです。

 しかし、愛知県弁護士会が行った調査でも、救急を含む外来受診時における画像診断報告書の確認不足での事故も数多く指摘されているように、報告書の確認が問題となる場面は必ずしも入院中の診療に限られません。同調査の報告書においても、診療報酬加算による財政的措置が提言として挙げられており、今回の新設はまさにそうした観点からの対策として評価できるように思われますが、今後、日々の外来診療も対象とされていくことも期待されるのではないでしょうか。

 

【参 考】

□厚生労働省「個別改定項目について」

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000

/000905284.pdf

□報道記事(共同通信)

https://nordot.app/921906453386133504

□愛知県弁護士会「画像診断報告書の確認不

 足に関する調査研究報告書」

https://www.aiben.jp/about/katsudou/jinken/083928db369ab7294c3ddeca50f939a98d6d6453.pdf