柄沢好宣(嘱託)(2022年10月センターニュース415号情報センター日誌より)
厚生労働省に推進チーム設置
本年7月号の本稿(執筆・松山健常任理事)において、厚生労働省「医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」の検討状況についてご紹介しました(https://www.mmic-japan.net/2022/07/01/diary/)。
こうした流れの中、厚生労働省は、2022年9月22日、「『医療DX令和ビジョン2030』厚生労働省推進チーム」を設置しました。政府は、既に本年6月7日に、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針2022)を閣議決定しており、その中で、総理を本部長とした「医療DX推進本部」を設置して医療DX関連施策を推進する方針を示していましたが、今回の推進チームの設置は、これをより具体化するものと理解されます。
医療DXの方向性
そもそも、「医療DX」という言葉自体になじみのない方も少なくないかと思います。厚生労働省によれば、医療DX(Digital Transformation)とは、保健・医療・介護の各段階において発生する情報やデータを、全体最適された基盤を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えることと定義されています。
今般、医療DXが議論されることとなった背景として、少子高齢化が進んでいる中での国民の健康増進等の観点に加え、新型コロナウイルス感染症流行への対応を踏まえて認識された課題としても、「見える化」した医療情報等の利活用の重要性が指摘されています。
これを受け、今後の医療DXの目指すところとしては、次の3つの柱を骨格としながら、国民自らが医療情報へのアクセスを容易にすることで健康維持・増進に活用する、新規の感染症危機においても迅速かつ確実な情報取得を可能とする等の方向性が打ち出されています。
①全国医療情報プラットフォーム
②電子カルテ情報の標準化、標準型電子カルテの検討
③診療報酬改定DX
なお、「全国医療情報プラットフォーム」については、「オンライン資格確認システムのネットワークを拡充し、レセプト・特定健診情報に加え、予防接種、電子処方箋情報、電子カルテ等の医療機関等が発生源となる医療情報(介護含む)について、クラウド間連携を実現し、自治体や介護事業者等間を含め、必要なときに必要な情報を共有・交換できる全国的なプラットフォーム」であると説明されています。
電子カルテの規格統一化も?
上記②の中では、今後、小規模の医療機関向けに、標準型電子カルテの開発も検討することとされています。メディアでも、厚労省が電子カルテの規格を統一することも含めた全国的なプラットフォームを整備する方針を明らかにしたと報じられています(https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000269326.html)。
現状、医療機関によって使用されている電子カルテはまちまちですし、まだ電子カルテが導入されていない医療機関もあります。また、記録の方法も医療機関あるいはそれを記載する個人ごとにかなり大きな違いがあるように感じます。
今後議論される医療DXの方向性のひとつに、国民が自らの医療情報へのアクセスを容易にすることが打ち出されていることを踏まえれば、国民にも理解しやすい形での医療情報の提供が望まれるはずです。今後の課題とされている統一規格の電子カルテの開発も、こうした観点が十分に反映されたものとなることが期待されます。
なお、この記事に関する詳細については、こちらをご参照ください。
□厚生労働省ホームページ