松山健(常任理事)(2023年7月センターニュース424号情報センター日誌より)
とりまとめ公表
2023年3月29日、健康・医療・介護情報利活用検討会が「医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループとりまとめ」を公表しました。
厚労省のウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001085126.pdf)で公開されていますので、ご覧ください。
電子カルテ情報の標準化・医療情報の共有に関する制度の内容、仕組みの詳細についてはとりまとめをご覧いただくこととして、本稿では、とりまとめで述べられている制度目的と制度導入により見込まれるメリットについてご紹介したいと思います。
全国的に電子カルテ情報を閲覧可能とする目的
とりまとめでは、電子カルテ情報の共有によって期待される関係各者のメリットとして次のような点が挙げられています。
【患者にとってのメリット】
・紙の文書の持参忘れを防止でき、紛失による自身の情報が漏洩するリスクを防止できる。
・文書の受け取りのための来院が不要になる。
・患者自らが6情報(「傷病名」、「アレルギー情報」、「感染症情報」、「薬剤禁忌情報」、「救急時に有用な検査情報、生活習慣病関連の検査情報」、「処方情報」の6つの医療情報)を確認することができ、自身の健康管理に役立てることができる。
・電子的に文書(診療情報提供書やその添付文書含む。)を作成することによる患者が文書を受け取るまでの待ち時間や、事前に紹介・受診先医療機関が文書情報を確認することによる診察前の待ち時間の短縮につながる。
・受診の際にマイナポータル等で6情報を閲覧しながら問診に答えられることで、正確な情報の記載・回答が可能となるとともに、その場で思い出す手間が削減できる。
【医療機関等にとってのメリット】
・紹介先医療機関等以外への誤FAXの防止や、紙の文書の印刷・郵送の手間及びコストの削減が可能となる。
・6情報を参考に診療情報提供書を作成し紹介先医療機関等に提供することが可能となる。
・患者の来院前に紹介先医療機関が文書情報を確認することが可能となる。
・紹介元医療機関をシステム上で特定できることで、提供者が不明確な状態での文書の受け取りを防止できる。
・救急・災害時において、正確かつ迅速に患者の6情報を把握できる。
・地域を越えた専門性の高い医療機関との連携にもつながり、より質の高い医療の提供に資することができる。
【国等にとってのメリット】
・将来的に、匿名化等の処理を行ったデータ基盤を整備することで、迅速・的確な政策判断につながる可能性がある。
【保険者にとってのメリット】
・全国の医療機関等間で情報共有されることにより、重複検査の防止等につながる。
・救急等で6情報を把握することで、高額治療をする際の医療費の削減につながる可能性がある。
※今後全国医療情報プラットフォームの構築により、取り扱う情報及び当該情報を共有する機関が拡大する予定であり、二次利用も含め、より多くの関係者がメリットを享受できる見込みがある。
メリット
こうした状況を受け、上記報道では、「事故として報告することが施設にとってマイナスだという雰囲気をなくしていかねばならない」との機構の木村壯介常任理事のコメントや、「再発防止という制度の趣旨からすれば、医療過誤による死は率先して調査すべき」との名古屋大学の長尾能雅教授のコメントも紹介されています。
医療事故が起きてしまったこと自体は非常に不幸な結果ではありますが、そうであるからこそ、それを将来につなげることが重要なのだと思います。
5月27日(土)には医療事故情報センター総会記念シンポジウム「医療事故調査制度の課題~医療安全に資する制度となるために」も開催されました。当日は、様々なお立場のパネリストの皆様からご報告をいただきながら、活発な意見交換をすることができました(ご参加いただいた皆さまには、改めて御礼申し上げます)。
医療事故調査制度をより医療安全に資する制度とするためにはどのようにすればよいのか、医療事故情報センターでも今回のシンポジウムの成果を踏まえて、引き続き取り組んで参ります。
まとめ
本稿では、以前から、電子カルテの標準化、医療情報の共有をテーマに、厚労省の関連検討会等の議論状況をたびたびご報告してまいりました。このテーマに関連する以前の本稿の記事も参考になると思いますので、ご覧ください。
2022年10月
https://www.mmic-japan.net/2022/10/01/diary/
2022年7月
https://www.mmic-japan.net/2022/07/01/diary/
2021年3月
https://www.mmic-japan.net/2021/03/01/diary/
2020年11月
https://www.mmic-japan.net/2020/11/01/diary/
2020年7月
https://www.mmic-japan.net/2020/07/01/diary/
2019年11月