柄沢好宣(嘱託)(2023年8月センターニュース425号情報センター日誌より)
はじめてヤングケアラー支援を明記
近年、「ヤングケアラー」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
7月10日、厚生労働省社会保障審議会介護保険部会において、第9期介護保険事業の基本指針案が公表され、はじめてヤングケアラーに対する支援を強化する方針が明示されました。同期の介護保険事業計画では、2025年に団塊の世代が全員75歳以上になることなどが考え方の基本とされています。
「ヤングケアラー」という言葉は英国発祥とされており、国内での明確な定義は存在しないようですが、一般的には、親をはじめとする家族に病気や障害があるため、本来は大人が負担すべき役割を担うこととなっている若者を指し、年齢や成長の度合いに見合わない責任や負担が生じ、就学・学習や健康状態等に支障が出てしまうなどの問題点が指摘されています。
厚生労働省が令和2年度に文部科学省と連携して行った「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」によれば、世話をしている家族が「いる」と回答したのは、中学2年生で5.7%、全日制高校2年生で4.1%であったことも報告されています。
期待される横断的な取り組み
指針案の具体的な記載をみますと、「ヤングケアラーなど家族介護者支援に取り組むこと」、「ヤングケアラーも含めた家庭における介護の負担軽減のための取組を進めること」が重要であるとされ、そのために、地域包括支援センターが障害分野や児童福祉分野などの他分野、地域拠点で行われる伴走型支援などの関係機関等との連携を図るものとされています。こうした記載からは、ヤングケアラー支援にあたっては、地域包括支援センターを中心とした横断的な支援が期待されているものと理解されます。
ヤングケアラーをとりまく問題については、本年4月に発足したこども家庭庁において、厚生労働省や文部科学省など各省庁に横断的にまたがる問題について幅広く対応していくことが想定されているところでもあります。行政をはじめとして、様々な職種・立場からの幅広いサポートの実現が望まれるように思います。
LINEでの相談窓口も
比較的近時の報道を見ますと、福島県、山梨県、船橋市、品川区、ふじみ野市など、各自治体が無料の通信アプリ「LINE」を活用して、ヤングケアラー向けの相談窓口を開設するという取り組みも進められています。
若者を中心に非常になじみのあるツールでもあるので、気軽な相談が可能になるように思いますし、品川区に関する報道によれば、これをきっかけにコーディネーターとの対面での相談にもつなげることも狙いとしているそうです。
■第107回社会保障審議会保険部会の資料等
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33988.html
■こども家庭庁「ヤングケアラーについて」
https://www.cfa.go.jp/policies/young-carer/
■「ヤングケアラーからの相談、LINEで品川区が23区初の窓口開設」(朝日新聞デジタル)