国民・患者に対するかかりつけ医機能をはじめとする医療情報の提供等に関する検討会

松山健(常任理事)(2023年11月センターニュース428号情報センター日誌より)

かかりつけ医機能報告制度

 2023年10月13日、厚生労働省は、第一回「国民・患者に対するかかりつけ医機能をはじめとする医療情報の提供等に関する検討会」(以下「検討会」)を開催しました。

 2022年12月23日第95回社会保障審議会医療部会は、かかりつけ医機能の制度化の骨格案を示していましたが、これを背景に、2023年5月12日、国民への情報提供の強化等を内容とする改正医療法が成立しました。

 「かかりつけ医機能報告制度」は、2024年4月に創設が予定されており、新制度創設に合わせて、従来、平成18年の第五次医療法改正によって創設されていた既存の「医療機能情報提供制度」(医療情報ネット)も、現行制度からの刷新が予定されています。

 このように、新制度創設及び既存制度の刷新まであまり時間的な余裕のない中、本検討会では、制度の在り方を検討することとなります。

 検討会の下には、分科会として、「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」を新設し、既設の「医療情報の提供内容等の在り方に関する検討会」は「医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」に改編し、今年11月から各分科会で議論を開始し、進捗状況を相互に共有しながら、社会保障審議会医療部会にも報告して検討を進めます。

かかりつけ医機能の発揮が求められる背景

 制度創設、刷新が必要とされる背景として、人口動態と医療需要の変化があります。

 これからの日本の人口動態は、85歳以上の人口が2040年に向けて引き続き増加し、すでに減少に転じている生産年齢人口は今後も引き続き減少傾向が継続する見込みです。

 他方、医療需要のほうは、全国の入院患者数及び在宅患者数は2040年にピークを迎え、85歳以上の人口は2040年に向けて増加し、医療と介護の複合ニーズを持つ人がいっそう増加し、医療・福祉職種の人材の需要は現在よりも大きくなるというのに、2040年には日本の就業者数全体が大きく減少し、当然、人材確保が困難となることが見込まれます。

 医師数は、ここ20年で、病院勤務で5.5万人、診療所勤務で2万人が増加してはいるものの、高齢化も進展し、診療所勤務の医師の平均年齢は60歳まで上昇しているという実情があります。]

 このような背景で、限られた医療資源を有効活用し、これまでの「治す医療」から「治し、支える医療」にシフトして、地域の実情に即して、「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」を「かかりつけ医機能」と定義して、かかりつけ医機能が発揮されることによって、必要な医療を必要なときに受けられる体制を確保することが重要であるとされます。

 そのためには、国民・患者の側からは自分のニーズに応じた医療サービスを提供し、かかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるための情報提供の強化が重要となります。

まとめ

 結局採用はされませんでしたが、5月の医療法改正に際しては、公的に「認定」された医師が「かかりつけ医」となる認定制度や国民・患者が自分のかかりつけ医を公的に「登録」する事前登録制度の創設も議論されました。

 このような議論の背景として、日本の医療提供体制は、診療所、中小規模病院、大規模病院の間での役割分担を明確化して機能分化し、各医療機関で連携するというシステムの確立が、高度な医療機能を担う特定機能病院の制度化等の政府の諸施策にもかかわらず、あまり進まず、人的物的な医療資源が有効に配備されない状態が続いているという実態があります。

 たしかに認定・登録制となれば、よりドラスティックに機能分化・連携を促進する可能性は否定できませんが、患者の選択、フリー・アクセスを阻害する面があり採用に慎重であるべきと思われます。

 今後、制度の導入後の推移を見守っていく必要があります。