始動する「医師の働き方改革」

柄沢好宣(嘱託)(2024年4月センターニュース433号情報センター日誌より)

「医師の働き方改革」始まる

 この4月から「医師の働き方改革」が始まります(本号が皆さまのお手元に届く頃には、もう「始まりました」という状況です)。

 これまで、わが国の医療は医師の長時間労働により支えられてきたという問題点があり、その背景として、勤務医の労務管理が不十分であることや、様々な業務が医師に集中していることが指摘されてきました。

 そこで、勤務医の労務管理を徹底し、労働時間を短縮させることで医師の健康を確保しつつ、すべての医療専門職がそれぞれの専門性や能力を十分に発揮できるようにすることで、より質の高い安全な医療を提供できるようにしようというのが、医師の働き方改革の目的(目標)です。

見直される労働時間規制

 それでは、具体的にどのようなことが行われるのでしょうか。

 医師の働き方改革においては、大きく次の3つの対策が提示されています。

 

①長時間労働を生む構造的な問題への取り組み

②医療機関内での医師の働き方改革の推進

③時間外労働の上限規制と健康確保措置の適用

 

 このうち、医師の労働時間に直接的に関わってくるのが、3つ目の対策であると思われます。

 労働基準法では、労働者の労働時間や休日について定めており、やむを得ずにこれを超えて労働させる場合であっても、使用者側と労働者側とで延長できる労働時間数や休日労働の回数について協定を結ぶ必要があるとされています(労働基準法第36条に定められている協定なので、「36(サブロク)協定」と呼ばれています)。しかし、医療機関に勤務する医師については、こうした規制がこれまで必ずしも徹底されていませんでした。

 そこで、今回の改革では、医療機関に雇用されて診療に従事する医師に適用されるA水準(960時間/年)、地域医療の確保のためにやむを得ない場合に適用されるB水準(1860時間/年)、医師としての技能向上のために必要な場合に適用されるC水準(1860時間/年)という3つの水準での上限規制が設けられました。

 また、十分な休息時間を確保するための「勤務間インターバル規制」によって1日の勤務終了から次の勤務開始までに一定以上の休息時間を確保するようにしたり、100時間/月以上の時間外・休日労働が見込まれる医師には面接指導が行われるなど、医師の健康を守るためのルールも設けられています。

医師の健康確保から安全な医療へ

本号の巻頭でのドクターインタビューでは、産業医である嘉数直樹先生から、医師の働き方改革と勤務医の健康(特にメンタルヘルス)の確保について、非常にタイミング良くお話を伺うことが出来ました。

 より安全で質の高い医療が行われるためにも、医師の健康面の確保は非常に重要な課題であると思われます。医師の働き方改革が医療現場や地域医療にどのような影響を及ぼすかにも気を配りつつ、今後の運用に注目したいと思います。

 

(参考)

・医師の働き方改革概要

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001129457.pdf

・マンガでわかる医師の働き方改革

https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/manga