医療機能情報提供制度の刷新 ~全国統一システムへの移行

柄沢好宣(嘱託)(2024年6月センターニュース435号情報センター日誌より)

医療情報ネット「ナビイ」運用開始へ

 本年4月1日から、厚生労働省において、医療情報ネット「ナビイ」の運用が開始されています。

 平成18年の第五次医療法改正により、住民・患者による医療機関の適切な選択を支援することを目的として「医療機能情報提供制度」が導入されました。病院等に対し、医療機能に関する情報について都道府県知事への報告を義務付け、都道府県知事が報告を受けた情報を住民・患者に対し分かりやすい形で提供することを目的とした制度です。

 医療機能情報提供制度では、これまで、都道府県ごとに「医療情報ネット」と呼ばれる情報提供システムが運用されてきました。今般、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和5年法律第31号)による医療法の改正により、厚生労働大臣は、都道府県知事が病院等から報告を受けた内容を公表するに当たって必要な措置を講ずることとされ、これを受けて、従来、都道府県ごとに個別に運用されていた医療情報ネットを全国統一的な情報提供システムとして構築し、本年4月1日より「ナビイ」の愛称で新たな運用が始められたものです(愛称の「ナビイ」は、「ナビゲーション+医」の造語とのことです)。

「かかりつけ医機能」発揮の一環として

 今回のこうした運用の見直しは、本誌428号(2023年11月号)でもご紹介しておりますように、地域の実情に即しつつ、身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置などを行うための「かかりつけ医機能」を十分に発揮させ、限られた医療資源を効率的に活用するという狙いが根幹にあります。

 これまでは、都道府県ごと独自に情報提供が行われていたために、例えば県境の居住者が利用しにくいなどの問題から、従来の医療情報ネットの利用があまり多くなかったという実情もあるようです(https://gemmed.ghc-j.com/?p=59964)。

利用者を意識した運用に期待

今回のリニューアルでは、高齢者、障害をもつ患者や外国人患者などが利用することも想定し、他言語翻訳や音声読み上げ機能も実装されている上、それぞれの医療機関において、バリアフリー構造がとられているか、手話対応が可能か、対応言語が何かといった情報も確認できるようになっています。また、「かかりつけ医機能」の有無についても掲載されています。

 かかりつけ医機能を十分に発揮できるようにするためにどのような情報提供項目が望ましいかについては、実際の運用と並行しながらの検討・改修が予定されているようです。

 医療資源を効率的に活用するという目的も大変重要ではありますが、利用者の利便という点も置き去りにされてはなりません。多様性が求められる現代社会において、求められる情報がわかりやすく入手できる運用が期待されます。