松山 健(常任理事)(2024年11月センターニュース440号情報センター日誌より)
第3回まで実施
厚生労働省医政局が実施する「美容医療の適切な実施に関する検討会」が設置されたことを2024年7月の本稿でご紹介し、8月には、第1回会合での議論状況についてご報告しました。その後、2024年8月26日には検討会の第2回会合が、2024年10月18日には、第3回会合が開催されました。
関係団体・有識者ヒアリングでの問題点
紙幅の関係で、第2回会合での議論のうち、関係団体・有識者ヒアリングのうちの、一般社団法人日本形成外科学会からの意見聴取によって指摘された問題点をご報告します。
ヒアリングでは、人材問題と合併症問題の2点が指摘されました。
◯人材問題
臨床研修修了直後に直接美容外科へ入職する(いわゆる「直美」)医師、あるいは専門研修を早期に中断して美容外科へ入職する医師が増加し、形成外科、皮膚科に限らず、全診療科において美容医療への人材流出が深刻化し、この問題は韓国をはじめ、海外でも問題になっている。
◯合併症問題
美容外科を含めた医療では合併症は一定の割合で必ず起こる。
しかるところ、患者側からの軽微から重篤な合併症に対して、治療を行なった施設で対応できていないとの相談事例が多数存在する。
美容医療の合併症には、ショックや重篤な感染症など生命にかかわるものから、失明、組織壊死、瘢痕拘縮など重篤な後遺症を残すもの、傷跡、炎症、色素沈着など醜形を残すものなど、さまざまであるが、これらの合併症に対応できる医療レベルを修得するには、臨床解剖学や創傷治癒学を基礎に学び実際に多岐な手術を行なって形成外科学を修得した上でないと、合併症対応等の安全確保ができないが、「直美」を含めた、形成外科、皮膚科の専門研修を受けていない医師には、対応ができていない。
美容医療の質の向上のための対応案
また、厚労省からは、美容医療を行う上での課題と対応案が示されました。
◯課題
・適切な治療法の選択、患者への説明内容・説明方法、後遺症対応・アフターケア、医療提供体制、研修・教育体制等が示されたガイドラインがない
・患者となる国民は美容医療に関する情報を十分に持たず理解もしていないうえ、多くの場合インターネットやSNS等の手段で情報を得ており、質の高い医療機関を適切に選択するための正しい情報が行き渡っていない
・傷病の治療の必要のない患者に行われる美容医療によって健康被害が現に生じているにもかかわらず、自治体等による医療機関への立ち入り検査等の実施には体制上の限界があり、安全管理措置を確認するのが困難で、副作用や合併症が生じた際に、当該医療機関にアフターケア等の対応を行わせる仕組みがない
◯対応案
・ガイドラインを策定する
・医療機関が遵守する事項・法制度、美容医療のリスク等、適切な医療機関選択に資する情報について、国民に向けて周知・広報を行う
・美容医療を提供する医療機関の安全管理措置の実施状況等の定期的な報告、報告内容の公表を行う
安全管理状況の定期報告の義務付け
第3回会合では、厚労省は、上の定期報告対策の具体案である、病院やクリニックを対象に安全管理状況を年1回、自治体に定期報告することを義務付ける対応案を示し、委員からも異論はなく、今後、導入される方向性で進みそうです。