柄沢好宣(嘱託)(2024年12月センターニュース441号情報センター日誌より)
美容医療の適切な実施に関する報告書(案)の公表
本稿で度々取り上げて参りました「美容医療の適切な実施に関する検討会」の第4回会合が本年11月13日に開かれました。
今会合では、美容医療診療の場面における課題として検討会で確認された、「医療の質の向上」、「違法・違法疑い事例に対する対応」、「契約面の不適切事例への対応」の3つの課題について分析した結果を踏まえ、今後の対応策をまとめた「美容医療の適切な実施に関する報告書(案)」が公表されました。
今回は、この報告書案で提示された具体的な対応策を簡単にご紹介します。
2つの視点からの対応策
課題に対する対応策としては、大きく次の2つの視点からのものが提示されています。
1.適切な美容医療が安全に提供されるようにするための対応策
2.美容医療の質をより高め、質の高い医療機関が患者に選ばれるようにするための対応策
1つ目の対応策としては、安全な医療を提供する上での最低限の医療の質が担保されているかさえ疑わしい事例や、中には美容医療に起因して死亡事例まで起きていることが検討会で報告されたことなどを踏まえ、厚生労働省において、美容医療を提供する医療機関の管理者を対象として、安全管理措置の実施状況等について定期的な報告を求めることや、医師法等の関係法制に違反している疑いのある事案に対する立入検査や指導のプロセス・法的根拠を明確にすること、診療録への記録を徹底することなどが盛り込まれています。
2つ目の対応策では、関係学会によるガイドラインの策定、医療広告規制の取締り強化、行政・関係団体等を通じた国民の理解促進等が盛り込まれています。このガイドラインの策定にあたっては、治療内容や質の標準化という視点だけでなく、医事法制・消費者保護法制等の遵守すべき関係法令の内容や解釈、契約締結時において最低限遵守すべきルールなども盛り込む必要があると指摘されている点が注目されます。
遵守すべき事項が当たり前に守られるように
検討会では、臨床研修終了直後であるなどの若手医師が美容医療の領域に流れていることも指摘されていたようです。おそらくは、経済的理由がその背景にあるのではないかと想像されるところですが、美容医療業界に限らず、利潤追及に偏重してしまうと、本来遵守すべき事柄がおざなりになってしまうことは、既に各方面で指摘されていることでもあります。
今回の報告書案で提示された対応策を見ますと、遵守すべき最低限のルールが守られるようにするという内容になっているように思われますが、改めてこうした対応策が提示されなければならないということに複雑な思いを感じているのは私だけでしょうか。
当たり前のことが当たり前に行われるよう、今回提示された対応策を講じた上での経過を見守っていくことが重要であると思われます。
なお、報告書案はこちらのURLからご確認いただけます。