柄沢好宣(嘱託)(2025年4月センターニュース445号情報センター日誌より)
警鐘レポート公表される
医療事故調査・支援センターでは、医療事故調査制度の運用がはじまってからこれまでの間に、「医療事故の再発防止に向けた提言」を第20号まで公表しており、本誌でも、折に触れて「提言」のご紹介をして参りました。
この「提言」とは別に、医療事故調査・支援センターからは、昨年11月、本年3月と、「医療事故の再発防止に向けた警鐘レポート」が公表されています。センターによれば、この「警鐘レポート」は、「医療事故」としてセンターに報告された医療事故調査報告書から、迅速に注意喚起することで死亡回避につながると考えられたものについて整理・分析し、予期せぬ死亡につながった要因と死亡を回避するための方策(再発防止策)の点に絞ってとりまとめたものであり、臨床現場の一人一人に届けられる形での情報提供を目的に作成されたものとのことです。さらに、「警鐘レポート」は、「臨床現場の一人一人に届けられる形」での情報提供ができるようにまとめられたとのことでもあり、A4サイズでも両面印刷で1枚に収まるようなコンパクトな体裁となっています。
それぞれの内容のご紹介
昨年11月に公表された「ペーシングワイヤー抜去に伴う心損傷による死亡」は、3つの事例を分析してまとめられたもので(各事例の概要についても、医療事故調査・支援センターのウェブサイトでご確認いただけます)、心損傷に至ったと考えられる原因として、「心腔内に至るペーシングワイヤーの深い位置」もしくは「心筋および心嚢内で折り返すようなワイヤーの留置」が指摘されており、再発防止策として、「ペーシングワイヤーは、心外膜直下の浅い位置に、抜去する方向の軸と一直線になるよう留置する」などが挙げられています。
本年3月に公表された「注射剤の血管内投与後に発症したアナフィラキシーによる死亡」では、2018年に「提言」の第3号「注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析」が公表されて以降、さらに「医療事故」として報告のあった19例(成人)を分析してまとめられたものです。ここでは、「注射剤投与後に初発症状が出現した時点で、皮膚症状がなくてもアナフィラキシーを疑い、直ちに緊急コール・アドレナリン筋肉内注射を行う」との再発防止策が提示されています。
迅速な注意喚起による次なる被害防止に期待
上記のとおり、この「警鐘レポート」は、他の患者の死亡回避につながるよう、迅速な注意喚起を目的として作成されたものです。つい先日も、岐阜県内の医療機関で起きた死亡事故について、他の医療機関で起きた同種事故の報道を目にした患者の母が、「もう少し早く公表してくれていれば、娘の呼吸状態にももっと気をつけてもらえたのでは」とのコメントを発表した報道もなされました(https://www3.nhk.or.jp/lnews/gifu/20250227/
3080015310.html)。同じような診療を行っている医療機関であれば、他の医療機関で起きた同種の医療事故がいつ起こるとも限りません。迅速な情報共有・注意喚起により、不幸な死亡事例の低減につながることを心から願うばかりです。
(参考:医療事故調査・支援センターウェブサイト)
https://www.medsafe.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=224